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花沢物産日本本社。
「類様、時間になりました」
会社の専務室で最終チェックをしていた類の元へ、入社した時から秘書として働いてくれている10歳年上の田村が声を掛けてきた。
「ん」
類は顔を見ず返事だけ返し、必要書類を鞄に入れ席から立ち上がる。


車に乗り込み向かった先は、花沢物産が所有する美術館。
建物も館内もかなり老朽化したと言う事で、今度修繕工事を行う事になったのだ。
普段ならわざわざ類が出向く事もないのだが、会社は引退したがまだ健在の祖父から「お前がやれ」と言われ、渋々動き出した。


「花沢専務が自ら参加して頂くとは……」
専務自ら……などと言いながら、建設業者も今日は初日と言う事もあり社長が同行していた。
「ここは祖父にとって思い入れのある美術館なので。正式に契約が済みましたら、以後はここの館長である薗田に任せるつもりです」
「よろしくお願い致します」
「こちらこそよろしくお願い致します。弊社も担当はこの佐々木に任せるつもりでおります。この道30年のベテランですのでお任せください。現場の者もベテランが多いですから安心して工事が進められると思います」
美術館の事務室で通りの挨拶を済ませると、修繕工事を依頼する建設業者との話し合いが開始された。


話し合いは終始穏やかに進み、
「では今言われたご依頼案を一度弊社へ持ち帰り、見積もりを出してみます」
「よろしくお願いします」
「こちらこそ、どうぞよろしくお願い致します」



類達は美術館の入り口まで業者を見送り、会社へ戻るため田村と2人駐車場へ歩き出した。
「なんとか予算内の見積もりでくるとよろしいですね」
田村の話に類は頷きながら自分の考えを口にした。
「ん。本当は他所の会社に任せたいんだけどね……」
「そうなんですか?」
「野崎建設の前社長がお爺様の友達だからって事で、40年前この美術館を作ったでしょ」
「はい。ですから修繕工事も同じ会社へ依頼を……って事でしたよね」
「けどもうお爺様の友達の前社長は亡くなっているし……。ビジネスなんだから義理も何もないよね」

もともと好き嫌いがハッキリしている類だが、ここまであからさまに毛嫌いするのも珍しいと田村は思った。
「何か気に入らない事があるんですか? 資料にもある通り、野崎建設は安定した大きい会社ですよ」
「……ん。……強いて言うならあの野崎社長の目……」
「目でございますか?」
「……まぁ……あの汚れ濁った目も、社会の中では別に珍しい事じゃないかも知れないけど……」


そう言って類が思い出すのは、黒い大きな目をした女性。
まっすぐ前を向く、印象強いキレイな目。
もう何年もあんなキレイな目をした人に出会ってないな……と類は思う。

牧野つくし

英徳学園を卒業と共に逃げるようにF4の前から姿を消した。
それがつくしの決めた答えなら……と類は追うのを我慢した。押し付けるだけが愛情ではないと知っていたからだ。
ただ父親はそんな類の気持ちを知ってか知らずか、類に長期の海外赴任を言いつけた。

知り合いのいない新しい土地で類は仕事に没頭し、ここ数年社会人として頑張ってきた。
つくしが結婚したというのを知ったのも、赴任先の海外だった。
若手ホープと噂される議員が前妻の死を乗り越えての再婚。
日本ではワイドショーに取り上げられるなど、一時期世間を賑わせたものだが類が結婚を知ったのは後になってからだ。
海外にいても日本の経済状況などは気にしていたが、議員の結婚などといった事にまでは関心はなかった。
たまに出張で数日間、日本に戻ってくる。
そんな生活をずっとしていた類が、正式に日本の本社勤務になったのは1ヵ月前だ。


「……」
「……」
類は何かを考え込み足を止めてしまった。
あと数歩で車……というところだから、運転手が車のドアを開けて待っている。
「類様?」
と田村が声を掛けると、聞こえるかどうか分からない声でブツブツ話し出した。
「……その時使った空港の新ターミナル。たしかそれも野崎建設だったはず……」
「……?」
「……そして今は獣医学部の大学を作るのに忙しいだろうに、花沢の美術館へ人員を送る余力を持っている……」
「はい。あそこは大きい会社ですから。それにしても空港ターミナルに大学の建設なんて凄いですよね」
田村は相手の仕事内容に感心するが、類は自分の世界に入り込んだままブツブツ話している。
「……公共事業……」
「……?」
「……」
「……」
考えがまとまったのか、顔を上げ隣に立つ田村を見た類は、
「野崎建設の資料をもう一度見せて」
と言ってやっと車に乗った。
「は、はいっ」
慌てて田村も返事をして車に乗り込み、類は渡された資料をくまなく読んだ




一週間後、野崎建設から美術館修繕工事の見積もりができたと連絡が入った。
類は打ち合わせの美術館へ行くギリギリの時間まで仕事をしていたのだが、その専務室に田村が神妙な顔をして入ってくる。
「……類様」
「何? もう時間?」
書類にサインをしながら顔を上げずに返事をすると、
「いえ……野崎建設を調べ直しました。こちらをご覧ください」
と田村は言いながらA4サイズの茶封筒を渡した。

一週間前、車の中で資料を確認した類は田村に「もっと詳しく野崎建設を調べて」と頼んでいたのだが、それが出来たのかと中身を確認する。
新しく届いた資料を読むにつれ、いつもは無表情な類の顔が驚愕に変わっていった。

「類様もご存知の通り公共事業などの建設の場合、請け負い業者は入札で決まります。これは実績のある業者、ない業者を平等に扱うために行われるのですが……」

入札とは、まずは発注者である国や自治体が工事を請け負ってくれる建設業者に、これくらいの金額でこの工事は出来るだろうという予想金額を設定する。
だがその予想金額は公表される事はなく、工事を請け負いたい業者は決められた日時に決まった場所へ赴き、弊社はこれくらいの金額でこの工事をやります。と言った用紙を投函する。
投函された用紙に書かれた金額と、発注者が事前に予想を立てた金額に近い業者が工事を落札する。
それが入札制度である。
投函された用紙の金額が高過ぎれば発注者の予算オーバーでその業者が選ばれる事はなく、低すぎても毎年使う税金の予算は決まっているから大幅にお金を余らせるわけにもいかず選ばれない。年々予想の設定金額は低くなっている世の中だ。それに建設業者も低すぎると儲けがない事になる。
工事をする建設業者は人件費材料費、その他にかかる費用すべてを計算して、尚且つ発注者の予想金額も読まなければならないので、公共事業の工事を落札するのはなかなか難しい。

「だけど、抜け道はあるって事だね。田村」
「その通りです。裏道ですが……」
「裏金」
「はい。野崎建設は政治家に裏金を渡し、事前に工事の予想金額を入手しておりました。この大学建設の入札は野崎の出来レースです」

田村の説明を聞き終わった類は、手にした書類をもう一度見て苦い顔をする。
そこに書いてある、裏金を渡した相手。

今泉新次郎。

つくしが結婚した男性。


「それと……もう1つ……」
「何?」
「そちらの資料には書かれておりませんが、小耳に挟みました……」
「……?」

「近々野崎建設には、国税局の捜査部が入るようです」

「……それってマルサの事? 野崎建設は知ってるの?」
「おそらくはまだ知らないかと思います。国税局ももうこの裏金による脱税については証拠を掴んでいるかと……」
「……そ。……とにかく野崎建設とはまだ契約を交わしてないから、先日の修繕工事は白紙に戻して」
「はい」
田村は返事をするなり急いで準備にとりかかる。


類は机の上のパソコンを操作し、先日行われた政治資金パーティーの写真を発見する。
今泉新次郎とその隣で寄り添うように立つ妻のつくしの姿。
夫は労わるような優しい目で妻を見るが、もう類の目には新次郎のその目は偽りにしか見えない。


「田村。他にもこの今泉と繋がりのある企業を洗い出して」
「は、はい」
「この野崎建設みたいに今泉に闇献金を渡している企業が他にもあるなら、その全部と花沢物産は手を切る」



学生の時、唯一F4に間違っていると真っすぐな目を向け発言したつくし。
他の周りの人達と違い、親のバックグラウンドに惹かれない、一人の人として見てくれた。
自分の中にある正義を信じ、いつも真剣にぶつかって来る。
大きくて黒い目がとてもキレイな女性。

そんなつくしの旦那が闇献金で金を集め、つくしを裏切っていた。 
学生時代、汗水流してお金を稼ぐつくしを見ていた類には、彼女の近くにそんな汚いお金がある事が許せるはずもなかった。

類は血が出るのも構わず下唇を噛み、机の上に置きっぱなしになっていた新次郎の名前が書かれた資料をぐしゃりと握った。



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Comments - 6

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スリーシスターズ  

おはようございます。

類くんの洞察力と観察眼は相変わらずすごいですね。
普通に話をしているようにしか見えないのに、目を見て話をしただけで何か裏を感じ取ってしまうなんて。

調べたら今泉議員にたどり着きました。
つくしちゃんが他の人を選んでも幸せになってくれるなら、それでいいと思えるのに、つくしちゃんを欺いていると知ったらこのままではいられませんよね。

類くんはあきらくんや総二郎くんとはまた違った感情を持っているみたいですが、つくしちゃんに会って夫を信じる妻を目の当たりにしたらどう思うのでしょうね。

5人の思いがどう絡み合っていていくのか?
まだまだ目が離せませんね。

2017/10/20 (Fri) 07:25 | EDIT | REPLY |   
桃伽奈  
スリーシスターズさま

おはようございますw
コメントありがとうございます♪

「darkness」のようなシリアスなお話は初めてで、「romance」と同じく類担当で書かせて頂いたのですが、向こうとはまた違った意味でとても緊張しました;;

類にとってつくしは「特別」な存在です。(類だけでなくF4のみんな、それぞれにとってですがw)
仰る通り、つくしがただ幸せなら何も言わなかったと思います。今まで通り見守っていました。でも欺かれ危ういところにいるのだと知ったら黙っていられません。
三年寝太郎も行動に移しますww

この後、つくし+F4(ついでに今泉も)がどうなっていくのか……次の更新までお待ちください♪
お話を読んで下さりありがとうございました。

2017/10/20 (Fri) 09:27 | EDIT | REPLY |   
kachi  

桃伽奈さま
こんばんは!
お話の更新ありがとうございます😊

類くん
目を見て汚れ濁った目なのかキレイな目なのか直感で分かるってさすがです。
類くんを表現される時もよくビー玉のようなキレイな目と言われていますが、大人になった今も変わらずにキレイな目なのでしょうね♪
今のつくしの目はもしかしたら、残念ながら少し曇っているのかもしれませんね。

今泉が本当に裏切っているのかはまだ分かりませんが、つくしが幸せでないことは確かですね。
つくしが幸せならそれで良い、たとえそれが自分の隣でなくても考えられる類くんだからこそ、燃える熱い想いを感じました。

続き楽しみです

2017/10/20 (Fri) 18:50 | EDIT | REPLY |   
桃伽奈  
kachiさま

こんばんはw
コメントありがとうございます♪

類にとって学生の頃、つくしの真っすぐな目が印象深かったと思いますw
何と言っても教師ですら遠慮して何も言えない自分達に向かって、真っすぐ見つめ返してきた女の子ですからww
そんなつくしとの思い出を持った類なので、今泉の不正行為は許せなかったと思います。
でもあの頃と少し変わってしまったつくしに、仰る通り少し曇ってしまっているかも知れません;;
類はどう思うのか……?

この後も、つくし+F4(ついでに今泉も)がどうなっていくのか……更新まであと少しお待ちください♪
お話を読んで下さりありがとうございました。

2017/10/20 (Fri) 23:12 | EDIT | REPLY |   
さとぴょん  

桃伽奈様♡
さすが類くんのお話
ありがとうございました。

類、ずっと海外だったんですね。
野崎社長の目が気に入らないと言っていた類
濁った目だけでよく見破りましたね。

新次郎の微笑みが偽物だと気付いた類。
さすがでした。

なんだか、類なら・・・今のつくしを救えるような気がするなぁ・・・。

続き楽しみにしてます(*^^*)♡

2017/10/23 (Mon) 04:13 | EDIT | REPLY |   
桃伽奈  
さとぴょんさま

こんばんはw
コメントありがとうございます♪

今回「darkness」のようなシリアスなお話を初めて書かせていただき、とても緊張しました。
裏話をしますと、最初に下書きとして描いた時はもっとのほほんとした内容だったんです^^;
「類のマイペースに振り回される田村さん……」みたいな感じだったのですが、これだとシリアスじゃない……って思い、慌てて書き直したらこんな感じの類になりましたww
やっぱり私には向いてないかも……ってビクビクしつつ、書き終わった後はもう後ろの方に丸投げ……な気持ちが大きかったです(汗

昨日は選挙の日。
テレビに映る進次郎さんをカッコいいな……って思いながら見ておりました^^;
このお話の新次郎さん、そしてつくし+F4がどうなっていくのか……。今後もよろしくお願い致しますw
お話を読んで下さりありがとうございました。

2017/10/23 (Mon) 21:41 | EDIT | REPLY |   
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