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類は焦っていた。
ライバル達との順番デート。
あきらから始まり、総二郎、司……そして類。
類は自分が最後になった事に、みんなから後れを取ったような感じがしてならない。
やっと回ってくる自分の番に、どうしても前の 3 人よりも優位に立ちたいという、はやる気持ちは抑えられなかった。





今夜も4 人揃ってつくしがいるお店の『まき乃』にやってきた。
いつものようにカウンターを陣取り食事をしている最中、

「あとやってないのは類だけだな」

「お前はどんなデートプランを考えてるわけ?」

「……」

女性の扱いに慣れているどこか上から目線の 2 人の言葉に、類はピクっと反応するが沈黙を通した。

実際はまだつくしとのデートを終えていない司が、
「まさかノープランじゃないだろうなっ」
なんて挑発的な言葉を投げかける。

一瞬怒りそうな空気を出したが、普段から喜怒哀楽を表に出したりしない類の表情はいつもと変わらず、ましてやまだ何も考えていないなんて発言は、類の口から音として外には排出される事はなかった。


学生の頃は三年寝太郎とか、昼行灯とか周りから色々揶揄されていた類だが、その理由は至極簡単。
興味がない事に関しては、目に入らないだけだ。
だがつくしの事だけは違う。
ここ一番でやる気な類は、自ら勝ちを譲る気などサラサラなかった。

そんな気持ちは類の中にあるのだが、どんなデートをしたらいいのかという答えは見つからない。

(どうやったらコイツ等より一歩前へ出られる?  4 番手なんてよっぽどの事をしない限り霞んでしまうもんじゃないのか?)

類は 3 人が口々に話しているのを右から左へ聞き流し、カウンターの中で今夜もせわしなく働くつくしの姿を眺める。
俺達とのデートが始まり、つくしの料理に変化が現れた。
今までの温かみがあるつくしの料理に、『おもてなし』の心が入った料理は大評判で、今まで以上に大勢の客が押し寄せるようになっている。
最近は時間帯によって満席があたり前。
決して広い店内ではないのだが、今夜もカウンター席テーブル席共に空席がない状態だ。

一緒に働いている宮内は、夜のこの時間帯お酒をメインに担当しており、料理はつくし 1人が回している。
鍋に入っている煮物などは皿にのせるだけでいいが、注文を受けてその場で調理するような料理も多々あった。

ここ最近、慌ただしく働くつくしを見るばかりで、ゆっくりと会話ができていたかな……なんて事を類はぼんやり思い出した。

(デートプラン……)


類はある事を思いついた。





翌日、まだ開店前の『まき乃』の中ではつくしの驚きの声が響き渡る。

「えええぇぇぇ!?」

本日のランチメニューの仕込みをしている途中、突然現れた客を見ながら、大きくて印象強い黒目を何度も瞬きし、相手を確認している。

「今日からヨロシク」

そう言いながら、普段他の人には滅多に見せない貴重な笑顔でつくしに話しかけるのは、花沢類。

「……え、だって……」

突然の状況に頭がついて来ないつくしは、パニック状態だ。

「今度の牧野の休みまで待てない」

「……ま、……待てないって……言われても……え? だって……」

今度のつくしの休みというのは、類と初めてデートをする約束の日。
だが類は待てないと言って、まだ営業前のお店へ乗り込んできたのである。


「だから俺とのデートは、このお店でしよっ」


類が考えたデートプランとは、つくしの店でバイトをする事だった。
ずっと一緒にいられて、尚且つつくしの事を助けてやれる。
それが何よりも、つくしに類と言う人物を印象付ける事が出来るだろうと、考えた結果だった。


「で、でも花沢さん会社は……」

「リフレッシュ休暇」

「……リ、リフレッシュ? ……え?」

リフレッシュ休暇とは、企業が社員の勤続年数に応じて特別に与える長期休暇の事である。
大体 5 年、 10 年ごとの区切りにしている企業が多いのだが、類は前倒しで強引に取って来たのであった。
本人曰く、インターンで働いていた時期があるのだから、今年が 5 年目……と言う事らしい。



そんな今から働く気満々の類を目の前に、やっぱり困惑を隠せないのはつくし。
「宮内さん……」
助けるような視線を投げかけるつくしだが、宮内が言った言葉は、
「いいではないでしょうか。最近は猫の手も借りたい程忙しいですし」
「えええっ。……でも、だって……」
助けるどころか類の味方をする宮内に、つくしの「でも」「だって」がまた連発された。



だが宮内としては当然の言葉だ。
本来このお店はつくしの「お相手」を探すために始めたものだ。
それがこの男 4 人組は、つくしの心を射止めんとして個々にデートへ誘い出した。
そのデートの場がこの店内だと言うなら、監視もし易いというもの。
主人である森山から護衛の仕事も任されている宮内は、つくしに危険が及ばないようにと常に気を張っている。
それは店内だけでなく、外でも同じだ。
もちろん外では一人で対応しきれないから、応援の仲間も幾人かいるのだが……。

男はいつ理性のタガが外れて狼になるとも限らない。
合意なら見過ごすつもりでいる宮内だが、そうでないなら黙ってはいられない。



「まーきの」

まだ煮え切らない顔をするつくしに、類は最後の手だと腰をかがめお互いの目の高さを合わせた。

「……?」

「宮内さんの許可も出たよ。あとは牧野だけ。……それとも俺がいたら迷惑?」

首を傾げながら甘えた声を出せば、つくしが「……うっ」と言葉に詰まった。



正直つくしとて類が邪魔だ……なんて思っているわけではない。
宮内が言うように、人手が欲しいと頷ける。
ただ甘えていいのだろうかって後ろめたい気持ちがあるだけだ。



だが目の前にある、このビー玉のようなキレイな瞳がいつもより優しさを帯びて細められた。
「……っ!」
その瞳に逆らえる女性がこの世にいるのだろうか……と、つくしは身構える。

それこそ類の計算なのだが、つくしもそんな逆らえない女性の 1 人であるかのように、気が付いたらコクンと頷いてしまっていた。





仕事を開始するにあたり、『まき乃』では制服などは用意されていない。
だがつくしと宮内はお揃いの黒エプロンを付けていた。

「花沢さんのエプロンはどうしよう……」

「私の物で、まだおろしていない新品のエプロンがありますので、そちらを使って貰えればよろしいんじゃないですか?」

宮内は言うなり奥へ入り、まだナイロンを被ったままのエプロンを持って戻ってきた。
それを受け取ったつくしは袋を破り、類の体にサイズを確かめるようにあてる。

「うん、大丈夫だね」

体つきは普段から鍛えてある宮内の方が少し大きかったが、身長は類とそんなに変わらない。
エプロンの丈も、宮内が使っている物と同じサイズで問題なかった。
類がつくしからエプロンを受け取ろうとすると、

「あ、ちょっと待ってね」

何かを思いついたつくしもまた一度奥へ戻り、自分の鞄を持って戻ってきた。

「「……?」」

類と宮内はつくしが何をするつもりなのか黙って見ていると、鞄の中から携帯用のソーイングセットを取り出し、

「宮内さんのとサイズが一緒だと、洗濯した時にどっちがどっちなのか分からなくなるでしょ」

と言って、エプロンの左上の方に小さく『 R.H 』と糸で刺繍をしていった。

『花沢類』

これが、つくしが類の本名を知っている、または覚えてくれているという何よりの証拠。
縫い終わったつくしからエプロンを受け取った類は、これまでにない笑顔をつくしに見せ、

「ありがとう」

とお礼を言った。




そして 3 人でランチの開店準備を始める。
料理が出来ない類はテーブルを拭き終えた後、

「花沢さん、次はこのボウルの中にあるおかずを、この小鉢にこれくらいの量で入れていって貰えますか?」

「あい」

つくしの指示に従い、さっと茹でたもやしときゅうりの細切りをコチュジャンで和えた今日の副菜を、お手本通りの量に仕上げていく。
長角盆一杯に小鉢を並べたら、そこにラップをかけさらに長角盆を置いて小鉢を並べていく。
そうすると来た客にさっと小鉢の料理を出せるから時間短縮になるのだ。



そして開店時間。

「では、今日も一日よろしくお願いします」

つくしがそう言うと、宮内も

「よろしくお願いします」

と言うので、類も慌てて

「よろしくお願いします」

と言った。


2人の顔を確認したつくしが店の入り口へ行き、ドアの所に『営業中』というプレートをかかげる。




お昼時、中目黒にあるお店はあっという間に満席になった。
慣れた呼吸でつくしと宮内はランチメニューを次々とお客へ運んで行く。
類も運ぶのだが、長角盆に乗せた味噌汁をこぼしそうになったりして運ぶのが意外に難しく、つい慎重な足取りになってしまう。
手伝いに来たのだが、初めての作業に思う通りには動けなかった。



いつもは見ない若い男、それも男前に入る部類の従業員がいるのを見た今日の客たちは、
「ねぇ、新しい人雇ったの?」
これ幸いと、類の事をネタにつくしとの話題作りに励んだ。
そんな馴れ馴れしくつくしに話しかける客達をイラっとしながら見ていた類だが、当のつくしは呑気な声で、

「臨時で来てもらってるんですよ」

と答え、次のお客のランチに取り掛かる。

もっとゆっくり話したいと思っている客達だが、店内満席状態ではこういった仕事の経験がない類が 1 人入ったところで、つくしに余裕が生まれたりはせず、独り占めになど出来るはずがなかった。


つくしは本当に働き者で、お客が話しかける事については丁寧に受け応えをしている。
そしてしっかり手も動いているのだから、感心ものだ。

類はお客が帰った後のテーブルを片付け、カウンターへ戻るとつくしが洗い場でお皿を洗おうとしていた。

「あ、俺がやるよ」

「……え? でも、これは花沢さんには……」

「何? お皿を割るとでも思われてるの?」

「ち、違いますっ」

と、大声で否定してからつくしはまだいる客の目を気にして、小さい声になり

「……嫌じゃないですか? その……これって他人が使った食器を洗うんですよ」

「……? それが仕事でしょ?」

「そ、そうだけど」

「俺は新米バイト。……情けない話だけど、牧野みたいに料理が作れるわけじゃないし、足手纏いになってるって思う……だから俺に出来ることは何でもするから言って。色々覚えていきたい」

 類の真剣な眼差しに根負けしたつくしは、

「……足手纏いだなんてっ……。じゃぁ、お願いします」

ペコリと頭を下げるつくしに、類も

「あい」

と元気よく返事をした。



そして泡をたっぷり使って食器を洗っていく。
満席の店内、その人数分となればかなりの量だ。

食器用洗剤とは油などを落とすのに手の油まで一緒に流れ落ちるのか、洗い終わりタオルで拭いたその手は少しカサついていた。


類はそんな自分の手をジッと見つめていた。



↓オマケ↓がありますのでこちらもどうぞ

Comments - 10

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スリーシスターズ  

こんばんは。
桃伽奈さん初めまして。

あみだで最後になってしまい、類くん内心は焦っていたのですね。
類くんは他の3人のデートの内容を知らないけれど読者は知っている!
あきらくんも総二郎くんもインパクトのあるデートでしたよね。
司くんは・・車のタイヤがパンクして仕切り直し!
でも薔薇の花束がインパクトありましたよね。

つくしちゃんのお店でのデート。
しかもランチタイムに手伝いをしてくれる。
どこかに行くよりも一番インパクトあったかもしれないですね。
お店の手伝いしてくれて、つくしちゃんすごく助かったと思います。

つくしちゃんが刺繍をしてくれたエプロンは類くんの宝物!?
他の3人はつくしちゃんから何かを貰ってはいませんからね。
類くんやりました!
ある意味類くん一歩リード!ですかね。

2017/10/16 (Mon) 18:17 | EDIT | REPLY |   
kachi  

桃伽奈さん
こんばんは!
はじめまして!
お話の更新ありがとうございます😊

類くんはそのビー玉のような綺麗な瞳だけで皆より一歩も二歩もすでにリードしてる気がします♪

つくしと一緒にお店で働くのがデートって発想素敵ですね♪
きっと、つくしも嬉しいし感謝してるでしょうね^ ^

類くんの『あい』というお返事 何だか可愛くてツボです^ ^

2017/10/16 (Mon) 23:20 | EDIT | REPLY |   
さとぴょん  

桃伽奈様 はじめまして(*^^*)♡

お話ありがとうございました。

つくしと同じ空間で働くことを、デートにした類。

類くんならではの発想ですね。

類くんが働いてたら、女性客が増えたりして(´艸`*)

私も類と並んでお皿洗いたい♡

続き楽しみにしてます。

2017/10/17 (Tue) 02:18 | EDIT | REPLY |   
桃伽奈  
スリーシスターズさま

はじめましてw
コメントありがとうございます♪

あみだくじを最後に引いた類のデート開始です。
これで全員出揃いました。司は仕切り直しになっちゃいましたが……おっしゃる通り薔薇のインパクトがありますので……^^;
類にも何か甘いシーンを……と思い、エプロンに刺繍を入れて貰いました。
そして間違いなく宝物になっているはずですw

この後の類つく作家様達が素敵にお話を繋げて下さっているので、他の3人同様類の事も楽しみにしていて下さい♪
お話を読んで下さりありがとうございました。

2017/10/17 (Tue) 09:22 | EDIT | REPLY |   
桃伽奈  
kachiさま

はじめましてw
コメントありがとうございます♪

『あい』の返事を気に入って下さり嬉しいですw
人見知りが激しい類も、想い人のつくしには甘えています^^
まだ仕事には慣れなくて足を引っ張っている状態ですが、この後の類つく作家様達が素敵にお話を繋げて下さっているので楽しみにしていて下さい♪
お話を読んで下さりありがとうございました。

2017/10/17 (Tue) 09:27 | EDIT | REPLY |   
桃伽奈  
さとぴょんさま

はじめましてw
コメントありがとうございます♪

類のトップバッターです。緊張しました^^;
一緒に働く事でお互いの事をもっと分かり合えたら……と思っておりますw

そして私も類と一緒にお皿を洗いたいです。いつも面倒だと思ってしまう家でのご飯の後片付けも、類と一緒なら嬉々としてやりますww
すみません……話が横に逸れてしまいました(汗
まだ仕事には慣れなくて足を引っ張っている状態の類ですが、この後の類つく作家様達が素敵にお話を繋げて下さっているので、楽しみにしていて下さい♪
お話を読んで下さりありがとうございました。

2017/10/17 (Tue) 09:33 | EDIT | REPLY |   
まりぽん  

桃伽奈さま、こんばんは。

花男二次祭りありがとうございます。
つくしとデート、最終バッター、類、悩むでしょうね〜
でもさすが類、つくしのことを、つくしが今一番何を求めているのか?を
しっかり考えて導き出したのがお店でのアルバイト。
そう出ましたか〜さすがです〜 と私もびっくりなデートです。
デートと言っていいかは別として、思いやり溢れる思いつきですね。
類のつくしへの一途な気持ちが伝わって来ます。
つくしのハートを動かす人として一番ポイントを得たように感じますが
果たして続きはどうなる。
デートを終えた後、4人での争奪戦最終ステージ楽しみです。

2017/10/17 (Tue) 22:38 | EDIT | REPLY |   
桃伽奈  
まりぽんさま

おはようございますw
コメントありがとうございます♪

類、悩んだ末に出した結果です。確かにデート……にしては異色かも知れません^^;
期間限定ではありますが、バイトが出来る事になりました。
類も他の3人のデートと同じく、つくしの仕事を支えながら想いを伝えていって欲しいなって思いますw
この後も皆様素敵にお話を繋げて下さっているので、楽しみにしていて下さい♪
お話を読んで下さりありがとうございました。

2017/10/18 (Wed) 09:03 | EDIT | REPLY |   
ノエノエ  

桃伽奈様

こんにちは。
待っていました!!
あきらくん、総二郎くん、司くん皆素敵だったので類くんの出番を物凄く物凄く心待ちにしていました(≧∇≦)♥️
デートの順番が最後…確かに不利な気がしますよね。でも最後が一番印象に残る可能性も高い!!
類くんの秘策「一緒に働く」。類くん自身を分かってもらうことはもちろん、つくしちゃんの事ももっと理解出来まし、大変なつくしちゃんを支えることも出来る。やっぱりピンチの時の花沢類ですよね(*^_^*)
類くんの首を傾げながらの甘えた声は最強!それを見られるつくしちゃんが羨ましい!

続きも楽しみにしています(*^^*)

2017/10/20 (Fri) 13:30 | EDIT | REPLY |   
桃伽奈  
ノエノエさま

こんばんはw
コメントありがとうございます♪

最後の出番、類とつくしのデートが始まりました^^
はい。類がつくしに甘えた声を出すのは最強の武器です。使っちゃいましたww
類は意外と頑固な面もあるんじゃないかな……って思います。つくしが遠慮して素直に「はい」と言えない時には絶対に譲らず押し通すかと……。その時の武器ですw

今回からバイトが始まり、一緒に働く事でお互いの事をもっと分かり合えたらいいなって思います^^
まだ仕事に慣れなくて足を引っ張っている状態の類ですが、この後も皆様素敵にお話を繋げて下さっているので、楽しみにしていて下さい♪
お話を読んで下さりありがとうございました。

2017/10/20 (Fri) 23:00 | EDIT | REPLY |   
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