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司×つくし最終話



空に広がる黒い雲を見て不安にかられたツクシは前をよく見てなかった。
ドンッ
誰かとぶつかり目を丸くしていると、グイッと身を引かれツクシは誰とも分からない他人に抱きしめられる。
ハッとして顔を上げると、そこには自分を見つめる優しい顔があった。
サラサラの黒髪に屈託なく笑う目元や口元はそれだけでもツクシを充分に見惚れさせるのだが、その以上にその青年は目鼻立ちの整った男性なのに美しいと表現してしまうほどの顔の持ち主だった。
「あ…す、すいません。前を、よく…見てなくて…」
顔を赤らめ弱々しく話すツクシはいかにも恥ずかしそうでいたのだが、その青年はその様子が好ましいらしく上がっていた口角が開き白い歯がキラリと光る。
「俺の方こそ気づくのが遅れた。どこにも怪我はないか?ぶつかってしまって申し訳ない。」
「い、いえ…だい、じょう、ぶ…けがはない、です。」
ボーッとするツクシはその青年が中々自分を離さない事に気づかなかった。
「そうか、それは良かった。けれど何かお詫びをしなきゃな。この先に俺がやってる店があるからご馳走するよ。パンケーキは好きか?」
「えっ…そ、そんなお詫びって…」
そう断ろうとしたツクシだったが、グーと盛大な腹の虫が鳴り顔だけではなく耳や首まで真っ赤にさせてしまった。
だが青年はそんなツクシの様子をからかう事をしない。
「食べていけよ。俺のパンケーキは美味いぜ。」
ニッコリと微笑まれツクシは断る事が出来なくなった。
そして青年と共に歩き出すのだが、青年の手はツクシの腰元にあってそれにツクシは何の疑問すら感じてない様子だった。
ツクシの頭上で青年がクスリと笑う。だがその笑みは先ほどまでの優しいものではなく苦笑いしている様に見えた。



2つ重ねられたパンケーキはその厚みから生地がふわふわだと見て取れた。
ヨーグルトの上に黄色いソースがかけられスライスレモンがトッピングされていた。
パクリ
ナイフでひとかけら切り取り口に運ぶ。
甘さの中に爽やかなレモンの酸味がアクセントとなってツクシの表情は瞬く間にとろけていった。
「はぁん♡おっいし~い…」
頬に手を当てツクシは恍惚の笑みを浮かべる。それを見た青年もニッコリと微笑み、ツクシは青年に対しある感情を意識する。

あたしってこんなに惚れっぽかったかな?
でもこんなに優しくしてくれて好きにならない人なんていないわよね。

フォークを唇に当てたままチラリと青年を見上げる。
棚の上に向けた視線がキリッとしていてカッコいい。伸ばした腕も男らしく引き締まった筋肉質で、ツクシはこの腕に先ほど自分は受け止められたのかとその様子を思い出しては赤くなった。
スプーンを使って缶から茶葉を取り出す様子さえ様になっている。長い指は男性的なのになんて綺麗なんだろう。あの掌で頬を包まれたらどうなるのか…ツクシはそんな事を考えてしまった。
そんな指が自分に向けられ、ツクシの胸はドキッと高鳴る。
「え…」
「付いてる。」
口元に彼の指先が触れた瞬間、ツクシは電気ショックを受けたように身体に痺れるのを感じた。思わず目を瞑ってしまい、開いた瞳は潤って彼を見上げてしまった。
目に映る彼の姿は何かに驚いているようだ。その理由が分からずツクシは首を傾げる。だが次の瞬間彼が破顔するように笑った顔があまりにも嬉しそうだから…
「俺と結婚しようぜ。嫌じゃねぇだろ?」
コクンと頷いてしまった。
ツクシはすぐにあっと思ったが、彼の嬉しそうな顔に言葉を続けられない。それどころか思ってしまうのはもっと彼を喜ばせたいと思う気持ち。
だから彼の顔が近づいてきても反く事はなく自然と目を瞑っていた。
チュッと唇が重なろうとする瞬間、カランカランとドアの開く音が聞こえハッとしたツクシはそのドアの方へと目を向ける。
入って来た人物はサクラーコだった。
「サクラーコ!」
「姫こちらに居た…」
口をつぐんだサクラーコをツクシは疑問に思う。
「どうしたの?って…え?あたし何で記憶があるの?あれ、ここって元の世界?」
「いや、ここは別の世界だ。マッキーノ王国がある世界ではない。」
ツクシの疑問に答えたのはサクラーコではなかった。ツクシはその声の主の方へ振り向くと彼はサクラーコに冷めた視線を投げつけていた。自分に向けられた視線との違いにツクシは呆然となる。
「な、なぜあなたがここにいるんですか?…というかその姿も…」
ギロッとサクラーコを睨む青年。その視線にツクシはあっと気づく。
「本当にどうしたの?あなた達は眠らされていたんじゃないの?シヴァ王の魔法で。」
そうこの青年はシヴァ王によって眠らされているはずのひとりの王子ツカサだった。ツクシに向けられた甘く優しい表情が消えた事でツクシもようやく事態を理解する。なぜ眠っているはずの王子がここにいるのかと…
「あんな奴の魔法でいつまでも眠らされる俺らじゃねーよ。」
「「え?」」
重なったサクラーコの声にツクシは彼女を見るとサクラーコはものすごく驚いた様子でいるようだった。
「サクラーコ、どういう事?」
「わ、私もどういう事だか…4人の王子がシヴァ王に眠らされていて、姫のネックレスでひとりの王子を起こせると…それで眠りから覚めさせてシヴァ王に向かう力を持てるとばかり思っていたのですが…」
サクラーコを睨んだままだったツカサ王子がふうと溜息をつく。
「ふん。お前それでも大魔法使いマーリンの娘なのか?マーリンから何も知らされてないようだな。」
「え?父上から…どういう事ですの?」
「そもそも俺は王子じゃねぇ。火の国、緑の国、花や氷っつったのはこいつの両親を納得させるためについたでまかせで、俺は火の神だ。魔法使いの力なんぞ目じゃねぇんだよ。不意打ちの魔法でちっと眠らされていたのをぐたぐだと騒ぎやがって、お前らただじゃおかねぇからな。」
ツカサ王子、いやツカサ火の神の本気の怒りを目の当たりにしてサクラーコは身震いした。
「騒ぎやがってって、そんなサクラーコはあたし達のためにすごく良くやってくれているのよ?マッキーノ王国がシヴァ王に攻められてあたし達の国は滅ぼされようとしている。そして助けられるあなた達は眠らされているんだもの。あたし達は必死だったの!」
ツカサ火の神、言いにくいからツカサに詰め寄るツクシ姫。ツクシに弱いツカサは落ち着けとばかりにツクシの頬を優しく撫でた。
すると閉じた瞼を開いたツクシが目を潤わせ見上げてくる。ツカサは堪らずツクシの唇を奪い深く深く口づけた。

その目の前で繰り広げられるラブシーンにサクラーコはわぁおとテンションが上がりながらも冷静に考えていた。
ツカサ王子いや火の神はツクシ姫を見初めている。それは他の3人の王子、いえこの様子だと他の3人も神という事になるわね。その3人も見初めているのかしら?
でもさっき姫の両親を納得させるためにでまかせを言ったと火の神は言ってた。あの2人が確かにそんな風に言いくるめられていると言われればそれは反論の余地など無い訳であって…それくらいあの王と王妃はどこか抜けている。
つまり私とお姉様は余計な事をしていたって事?
タラリと汗をかくサクラーコ。知らなかったとは言えかなりやばい状況だ。
そしてツクシ姫とツカサ火の神の会話が聞こえハッとさせられる。

「ツカサ王子…助けて…マッキーノ王国を助けて…シンが…弟のシンが、まだ幼いのに前線に立っているの。このままじゃシヴァ王にシンが殺されてしまうわ。」
涙ながらにツカサに訴えるツクシ姫。ツカサはそんなツクシを抱きしめ背中を撫でて優しく語りかけた。
「安心しろ。もうシンは前線にはいねぇし、もうシヴァの奴もマッキーノ王国を攻めちゃいねぇ。」
「本当?」
「ああ、本当だ。だからお前ももうキョトキョトするんじゃねぇぞ。お前は俺の嫁になるんだからよ。」
「うん……え?」
「え?」
顔を見合すツクシとツカサ。
だがキョトンと首を傾げるツクシにツカサのこめかみがピキと反応する。
「まさか本当に覚えてねぇのか?お前、俺の嫁になるって約束しただろ。お前んちの庭園であいつらの前でよ。だから俺はお前にペンダントを渡してお前が年頃になるのを待ってたんだぜ。」
「え、ペンダントってこれの事?これって4人からじゃなかったの?」
「4人からだぁ?おい、そこまで話は捻じ曲がってんのかよ!」
ツカサの険悪な表情がサクラーコに向けられる。だがその話はマッキーノ王国のハルー王とチェコ王妃から聞いた事。話を捻じ曲げた本人ではないのだから、トバッチリもいいとこだ。
頬をひくつかせながら青ざめたサクラーコが後ずさりすると、どこかから声が聞こえてきた。
『おい!いい加減にしろツカサ。ツクシ姫を捕まえたなら早くこっちに戻っててめぇの後始末しやがれ。お前が噴火させたマグマの暴走を今すぐ止めろ!』
「ソウか…おい、ソウ!マグマくれーお前らで何とかしろ。大地を動かすアッキーラと水を操れるルイとで何とか出来んだろ。お前の風だって無いよりマシだ。」
『無いよりだぁー?!俺は嵐にならねーように抑えてんだぞ。ルイの奴が無鉄砲に雨ばっか降らしやがるから俺があいつのフォローしてんだよ!』
「ハハッ。地味な役やってんのか。そりゃご苦労なこったな。」
『笑ってんじゃねーよ。早くマグマを止めねぇと俺のお気に入りの茶畑まで焼けちまうじゃねーか。俺達に嫌がらせするつもりならもう気がすんだだろ。つうか、そこにいる小娘らが主犯だろーが。俺達の知らねぇところで神の俺達がツクシに強姦まがいの事させられてよ!』
サクラーコの悪い予感は的中した。いやしたどころでは無い。早くこの場から逃げ出さなければ…そう思うのだが恐怖で動けなかった。
チラリとツカサがサクラーコを一瞥する。
「それもそうだな。おいソウ、小娘らという事はもう一匹の小娘も捕まえてんだろーな。」
『当然だろ。捕まえてニシカドの大木にくくりつけてある。逃げられやしねぇよ。』
ツカサは指先をスッと動かした。するとサクラーコが腕だけでなく口まで拘束されてしまった。
「え?サ、サクラーコ?…ツカサがやったの?」
驚くツクシをツカサは抱きかかえる。
「ああ。とりあえずあいつの事は戻ってからだ。シヴァの奴も裁かねえとなんねーしよ。」
そしてツクシとツカサ、サクラーコの3人はその世界を後にした。



ザアッと空間を飛び越えツクシがハッと気づくとそこはシヴァ王国の上空だった。すぐ側には拘束されたサクラーコも浮いていて、眼下の見えるシヴァ王国の姿に目を見開いている。
シヴァ王国は国の大半をマグマによって焼かれ、国民は残された跡地に避難している。
ツカサがサッと腕を振るとマグマがみるみる鎮火していく。赤黒いマグマが灰色の岩と化していった。そして建物を燃やした炎も消えていった。



マッキーノ王国の城の広間には見目麗しい4人の男がおり、その男達が王子ではなく神と知った面々が震えてその裁きを待っていた。
「ねぇツカサ、いつまでその頭でいるの?何か見慣れなくて気持ち悪いんだけど。」
「確かにな。」
「ああ、そうだな。元に戻すか。」
ツカサがさっと頭を掻くとそれまで真っ直ぐだった黒髪が癖の強い髪型へと変化していく。
玉座の横に座っているツクシもあっと声を漏らした。
「どうしてその髪でいたの?ツカサ、前に自分の髪は炎の形だって言ってたじゃない。」
「…まぁ、なんだ気まぐれだよ。大した意味はねぇ。」
「気まぐれねぇ…」
くっくっくと3人の神が苦笑いしている。ツカサはそれをひと睨みし警告した。
が、幼馴染でもある彼らには睨みが効くはずもなく…
「大方理由はツクシ姫がルイを気に入ってたからじゃねーの?意識体になってたとはいえルイとも絡みがあったようだし自分に惚れるか自信がなかったってとこだな。」
「るせ!んなんじゃねーよ。」
「そう?ストレートな髪ならソウだって違いないじゃん。けど俺を真似るのは俺を意識してるとしか思えない。普段俺様なくせに本当ツクシの事だけは弱気になるんだからお前は可愛い奴だよ。」
「るっせー!違うっつっただろ!」
「…あたしは嬉しいよ?」
「あ?」
3人を威嚇していたツカサがボソッと呟いたツクシの方を向くと顔を真っ赤にしてうつむいている。
そしてゆっくり顔を上げて、ツカサには最強となる上目遣いを無自覚に送った。
「あ、あたしはツカサがそんな風にあたしの事を考えてくれてて…嬉しい。あんたは昔っから、ルイに唸ってばっかりだったけど…それってあんたに構われたいからって…事からした時だって、あるんだよ。」
「…マジか。」
「ん…それに、あたしはあんたの髪型嫌いじゃないよ。あんたによく…似合ってるし…炎の髪型ってのもあんたらしいじゃん?」
「お、おお。まぁな…サンキュ。」
照れ合うツカサとツクシ。
だが火の神が赤くなる事はそれだけ暑くなる事を意味する。
「お前ら、イチャつくのはよそでやれ。見てみろ。お前らのせいで人間達はぐったりだぞ。」
アッキーラに声をかけられた2人が見たものは、サクラーコやシゲール、ツクシの父ハルー王に、母チェコ王妃、そして弟のシン王子が暑さでうだっている姿だった。
神であるルイにソウ、アッキーラ、そしてツカサのペンダントを身に付けているツクシはその暑さを感じなかった。
「わっ、みんな…えっ、ど、どうしたの?」
ツクシの慌てようにツカサはやれやれと気温を穏やかに下げる。それと合わせるように風の神であるソウが風を送り込めば、その風に水の神であるルイが湿度を乗せていった。
「あ、いきなり涼しくなった。」
「本当気持ちいい~」
「これもあなた達の力なんですか?」
楽になった体感温度に安心する中、弟のシン王子が冷静に4人に問いかける。
「ああ。俺たちにとっちゃこんくれー朝飯前だ。」
「…すごい。」
感心するシンに4人の表情は様々だ。
「…で、お前らの処分だけどよ。」
シゲールとサクラーコの表情が曇る。
2人は犯罪人のように後ろに手を組まれ拘束されていた。
「必要ないよ。だってシゲールもサクラーコもマッキーノ王国をなんとかしようと頑張ってくれた結果だもの。ねぇツカサお願い、この2人に罰を与えるなんてしないで。」
「けどよ…」
「それにこの2人にだけを罰せるのはおかしいわ。この2人はパパやママの話を真に受けたのよ。」
ヒイッと王と王妃が悲鳴を上げ怯える顔を娘に向ける。
「そしてパパやママにちゃんと話しておかなかったのは他の誰でもないあなた達よね。だったらあなた達が罰するのはおかしくない?そんな権利はないはずよ。」
ツクシはツカサの袖を掴み必死で説得した。ツカサはムッとした顔をしている。
「くく、ツクシがそれを持ち出すとはね。でもそれなら俺達4人ではなくなるよ。」
「え…4人じゃなくなるって…」
「王と王妃にきちんと話さなかったのは、この2人がいくら話をしても勘違いしたままでさ。だったら勘違いしたままでもいいじゃんって言った訳。ね、ソウ?」
向けられた視線にソウが盛大に溜息をつく。
「ああ、確かにツカサにそう言った。話が合わなくてらちがあかなかったからな…」
「らちが…」
「それってつまり王と王妃のせいって事になりますの?」
話を聞いていたサクラーコがようやく声を発した。ここに連れてこられてからは口の拘束は外されていたのだ。
「そうなるな。」
「ならば…」
救いを求めてサクラーコが顔を上げる。
「でも事態を悪くしたのはお前達だ。別世界に意識体を飛ばすのは分からねえでもないが、意識を無くす事でさらなるトリップって、なんだそりゃ。恋人選びで意識を飛ばすっつったらナニしかねぇだろ。つー事は狙ったな?それしか考えられねーよ。」
「せっかくツクシに気に入られてたのにさ。変な感情植え付けちゃって…ツカサとじゃれ合いにくいじゃん。どうしてくれんの。」
アッキーラとルイの追求にサクラーコは肩を落とした。それだけで追求が図星だったと返事したようなものだ。
「どうする?」
「そうだな…」
4人の神に冷めた目で見られ、シゲールとサクラーコは罰を受ける覚悟を決めた。4人の正体に気づけず調子に乗った事はもう否めない。
「しばらくその姿でいろ。それで許してやる。」
「へっ?」
パチンとツカサが指を鳴らすと、シゲールとサクラーコにある変化が起きた。
そして2人はわなわなと震え、悲鳴を上げる。
「「いやあーーーーーーーーーーー」」
「なっ、な、、なんですの、コレーーー」
「嫌だ、嫌だ、いやあーーー」
髪を振り回して取り乱す2人。
2人は…
皺だらけの老婆になっていた。
美に強いこだわりを見せているサクラーコにはさぞ拷問に違いないとツクシは思った。
「こんなのは嫌です。まだ痛いキツイ方がマシですわ。どんな拷問にも耐えてみせますから元に戻して下さいませ!」
「シゲールちゃんは痛いのもキツイのもおばあちゃんもいやあ~~」
泣き喚き減刑を懇願する2人。流石にツクシも気の毒になってツカサに情けを乞う視線を送る。
「嫌だから罰になるんじゃねーか。けどまぁ、どうしても嫌ならそれこそお前らで頑張ればいいんじゃねーの?」
「私達で頑張る?どういう事ですの?」
「くっ…お前らの親父は誰だ?大魔法使い…なんてほざいてるよな。」
それ以上の説明いるかと眉を上げるツカサ。サクラーコは目を見開き目ヂカラを復活させる。
「ええ、ほざいてますわ。そして私達に詳しく教えて下さらなかった。」
「サクラーコ?」
「お姉様行きますわよ。お父様に私達を若返りさせてもらいましょう。」
「へ?お父様に?」
「ええ、お父様に。どうせなら前以上に若返らせてもらいますわ。」
「くくっ。若返りの術は体力要る技だぜ?娘…いや見知らぬ婆さんに親父さんが簡単にかけてくれるとは思えねーけど?」
「見知らぬなんて言わせませんわ。仮にお父様が言ってしまえばお父様とはいえタダでは済ませません。お姉様っ、行きますわよ。」
「ちょ、ちょっと待ってよサクラーコ、あ、足がもつれて…あっ。」
グキッと音が聞こえシゲールが中腰で固まる。痛みで顔も歪んでしまっていた。
「お姉様…」
「だからおばあちゃんは嫌なのお~」
「シゲールさん…」
ツクシも手で口を覆う。
神の4人はしらっと表情を取り繕っていた。
「もうっお姉様ほんっとに世話が焼けますわ。ほら私にしっかり掴まって下さいませ。お父様のところまで一気に飛びますわよ。」
そういうサクラーコの足元もヨロヨロだ。言葉通りに一気に飛べるとは思えない。
「ね、サク…あっ。」
ツクシが声をかける前にドロンと消える2人。ツクシの伸ばした手が宙で固まる。そして情けない顔をツカサに向けるのだった。
「心配するな。あいつらならちゃんと親父の元に着いている。」
「フォローしたのか?」
「あの腰に免じてな。」
「確かにあれは可哀想だよね。笑っちゃったけど。」
「そうなんだ。良かった…無事元に戻るといいな。」
ツクシが2人のいるだろうあさっての方向に気持ちを向けると、両親である父と母と顔を見合わせた。
「あ…パパとママは何も無いわよね?」
「…んな訳ねーだろ。」
「そうだぜ。そもそもこいつらが話を聞かないのが原因でもある。」
ひぇ~~と抱き合う王と王妃。
ツクシはそんな2人であっても両親だからとかばってやりたかったが、それでは何も変わらないと分かってもいた。
「じゃあ…どうするの?」
「そりゃ退位だな。」
「「同感。」」
「それしかないね。」
「へ…退位?」
ほえ?と王と王妃も反応する。退位とはつまり王が王位を退く事だ。
「弟、お前が今からこの国の王だ。親みてーな過ちは犯すんじゃねーぞ。」
玉座に座ったツカサがシンに指さす。
王になれと言った男が王のような態度だ。
実際には神なのだが。
「僕が王…?でも、僕はまだ…」
「身体が小さいって言いたいのか?」
「王になるには身体の大きさじゃねー その力量があるかないかだ。」
「お前はその若さでも前線に立って敵の侵攻を食い止めた。兵を率いる力量がある。」
「それは現王よりも確実だね。だから…決まり。」
「異論はねぇな。」
ギロッとツカサに睨まれる王と王妃。
コクコクと首振り人形のように神達の提案を受け入れた。
その様子にツクシもシンを励まし始める。
「大丈夫よ。シン、あたしもあなたを応援するわ。あなた一人で戦わせたりしない。姉弟で助け合いましょ。」
「助け合う?お前は俺の嫁になるんだぞ。」
「え…そうだけど、すぐじゃないでしょ?シンが王として成長するまで待ってくれないの?」
「まだ待つのかよ?」
信じられないといったツカサの表情にソウとアッキーラはくくくと笑う。
「結婚してツカサの妻になった方がシンを助けられると思うよ。神の妻となればツクシあんただって神と同じ力が与えられる。」
「おお、そうだぜ。ツクシ今すぐ俺と結婚だ。」
「神と同じ力って…何が出来るの?台風でも作れたりするの?そんなのがシンの役に立てるとは思えないわ。」
「ツカサは火の神だぜ。台風を使いたいなら俺の妻にならねえと…」
「ああ?てめぇの妻だと?おいソウてめえやっぱりツクシの事狙ってんな!」
「狙ってねーよ。言葉のアヤだ。」
「ソウ、ツカサにとってややこしい事言うお前が悪い。黙っとけ。」
アッキーラが頭を抱えて2人を黙らせる。
ツクシはこの4人が本当に神なのか疑ってしまった。シヴァ王国で見せた神の力の記憶も新しいというのに。
「ねぇ、ツクシ。ツカサがうるさいから早く結婚してあげてよ。あんたと結婚したらこの暑苦しい奴もちょっとはマシになるからさ。」
「マシ?」
「そ、そうよ。ツクシ早くツカサ様と結婚なさい。女の幸せは結婚で決まるのよ。だからいつまでも待たせちゃ駄目。」
ツクシとルイの話を折って割り込んできたチェコ王妃。だが当のルイをはじめ4人の神達はしらっとした態度だ。金切り声が気に触ったのだろうか?
「今日はもう遅いから、明日にでも式を挙げると良いわ。そうね、城の教会はどお?それにドレスだってあたしが使ったのがあるわ。」
「ママのドレス?あの派手なヒラヒラの?」
信じられないと言ったツクシの声。
ギロリとツカサの瞳が動いた。
「そうよ。あなたにもきっと似合うわ。あれは私が憧れた気品ある王妃のウェディングドレスを真似たの。」
「真似た…ママ、ママの憧れはあたしの憧れじゃないわ。」
「んもう、そんな事言わないの。あなたの事は誰よりもあたしが分かっているんだからっ!」
神の3人が1人のこめかみに向けられる。だがその男は手を上げパチンと鳴らした。
「え?」
「えっ?」
ドロン
ツクシの目の前で母のチェコ王妃が小さくなり、それを目で追った。
「うわーママーーーー」
ハルー王が叫び声を上げ、ツクシとシンはビクッと肩を揺らす。
「ママッ!ママーー、そ、そんなママがネズミになっちゃったー」
両手を頬に当て雄叫びを上げる父の姿にツクシもシンも呆気に取られる。
…そして改めて理解する。この両親駄目だこりゃ…と。
「父上、ネズミじゃないよ。ハムスターだよ。可愛くなったじゃん。」
「可愛くな…何言ってるんだシン。ママが、ママがこんな姿になってしまったんだぞぉ~」
おいおいと泣きむせぶ父に実の娘と息子は声をかける気にもなれない。ツカサ達神が話にならないと言っていたはこの事なのかと痛感させられた。
「ツカサ…」
目で訴えるツクシ。自分でもまさかこんなお願いするとは思ってなかった。
頷きパチンと再び聞こえた後は、チューチューと小さく聞こえる鳴き声だけが響いていた。
こうでもしなければおそらく黙ってなどいられないのだろう。
そんな2匹をシンは掌に乗せ、その表情を覗き込む。
「2人ともしばらくその姿で反省しててよ。ちゃんと反省しないと元には戻らないよ、きっと。」
ハムスターの表情が変わったかはツクシには見えなかった。
「んじゃ、行こうぜツクシ。」
「行こうってどこに?」
「そりゃハネムーンに決まってんだろ。夫婦になったんだからよ。」
「夫婦って…え?式挙げてないわよね。」
「神には式なんて必要ないよ。夫婦になると言えばそれで2人は夫婦になれる。」
「そんなもんなの?」
「そんなもんなんだよ。手軽だろ?」
「もしかして本当にドレス着たかった?」
「え…そりゃ、まぁ。ママの好みのドレスではないけど…」
恥じらいつつも否定しないツクシ。一応ウェディングへの憧れは持っていたようだ。
「それなら任せとけ。俺がお前に似合うドレスを用意してやる。」
「本当?」
最強の上目遣いでツカサをノックアウトするツクシ。無自覚王女は相手が火の神という事をまたもや忘れ去った。
「姉さん、暑い!イチャつくのは外でやってよ。でないと俺たち茹で上がっちゃう!」
シンの掌でグタッとする2匹のハムスターにツクシはあわわと手で風を作っていた。
「とっとと行けよお前ら。お前らさえいなくなればこの部屋の温度も下がるんだからよ。」
「ククッ。2人、バカップルになりそうだね。まぁ仲が良いのはいい事なんじゃない?」
「おう。その通りだぜ。バカップル上等。俺はツクシと最強の夫婦になってやる。」
「ハハハハハ…違いねぇ。」
「最強って、褒め言葉?」
「お前達には褒め言葉だな。幸せになれよ。」
3人に祝福されツクシは照れ臭かったがコクンと頷いた。色々あったが4人と再会した事でツカサを選んだ想いを完全に思い出したのだった。そしてツカサが自分に胸キュンさせた再会を用意した事でツクシのカマトト意識を薄れさせイチャつきたいと思わせた事はツカサの想定外ではあった。
「姉さんおめでとう。幸せになってね。」
「シンありがとう。あなたも立派な王になってね。」
「ふふ、父上と母上が黙っているんだ。大丈夫だよ。」
「それもそうね。」
さらっと両親の評価を下げる姉弟。小さくガックリする両親だったが、それだけ2人はこの両親に苦労させられたという事だ。
「落ち着いたら会いに行くよ。…って姉さん達どこに行くの?」
「それもそうね…ツカサどこに行くつもり?」
玉座に座り会話の流れに満足していたツカサが、あぁとゆっくり語り出す。
「そりゃ2人きりになれるとこだな。俺たちがイチャつけるとこだ。」
「イチャ…やだ。」
「照れるところじゃないけどね。」
「いや、ツクシなら照れるんじゃないか?」
「案外そうかもな。」
意外なテンションの3人にツクシもシンも不思議がる。
「どこかの城…とかじゃなさそうですね。というか皆様方はご自宅とかあるんですか?」
「自宅?いや無えよ。適当な場所にベッドを作りゃ済む話だしよ。」
「適当って…?」
「そりゃ俺達の能力の適した場所さ。俺なら水の近くで、ソウは風を感じる場所。お気に入りは茶畑だっけ?風とはあんまり関係なさそうだけどね。」
「うっせ!」
「俺は大地の力を感じるところ。花の国と嘘ついたくらい花々は嫌いじゃないからそんな場所を好んではいる。」
「そして、俺だが…」
ツカサの好む場所を語る順になってツクシはようやくツカサの能力を気にかけた。ツカサの能力といえば…
「火があるとこって…どこ?」
どこと顔を向けるとニヤリとするツカサの顔があった。
「どこ?」
「どこだと思う?」
「どこって…分からないわ。え?火があるとこなのよね。あたし熱いのは嫌よ。」
「俺は平気だ。だから俺の嫁になったお前も平気になる。こいつらも…ムカつく事にそれなりに気にならねぇから、邪魔されねーとこに行かねぇとな。」
やっぱりと呆れる3人。手をひらひらさせてさっさと行けと追い払う。
「どこ?」
「知りたい?でも行けば分かるよ。」
「行けばって…あたしは火山しか思いつかないんだけど…」
「なんだ、分かってるじゃん。」
「マジで言ってる?火山だよ?マグマとかあるとこを言ってるのよね?」
「当たり前だろ。それにさっきそのマグマを操ったのを忘れたのか?俺にとっちゃマグマなんて土みてーなもんだ。」
「土じゃないし、焼けちゃうし!あたし丸焦げになっちゃうわ!」
「なんねーって。俺がさせる訳ないだろ?…まぁ、俺に焼かれるかも…しれねーけどな。」
「え?」
ニヤリとしながらも妖しくツクシを見つめるツカサ。
ツクシはその視線にドキドキと落ち着かなくなった。
「焼かれるって…」
「ここと…ここだな。嫁にするからにはもう遠慮はしねぇぞ。気が狂うくれー待ったからな。」
「…そんな。」
しなだれかかるツクシを抱きしめるツカサ。
いきなりのピンクモードにシンは真っ赤になってくるりと背を向けた。
「おい、またここが暑くなるぞ。お前らは火山くらいがちょうどいいんだ。早く行ってイチャついて来い。」
「落ち着いたら戻っておいでよ。そしたらまたみんなで遊ぼ。」
「いつ落ち着くかは気にするな。…て聞いちゃいねーか。」
チュッチュッとし始めた2人は今にも始めそうだった。
流石にそれ以外放っとくと酷暑になりかねんとルイが手を上げると、ツカサはようやくツクシを連れてドロンと消える。
「火の神が増えるのも近そうだね。」
「あんなのが増えるのか…それは勘弁だな。」
風の神はそうボヤいた後、手を振ってマッキーノ王国に爽やかな風を流し込んだ。その風には花びらが舞い、王国の人々を魅了する。
2人の門出を祝福するかのように…




↓オマケ↓がありますのでこちらもどうぞ

Comments - 5

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スリーシスターズ  

こんばんは。

Fantasyも終わりに近づいてきたんですね。
まずは、司くんとつくしちゃんのHappy endからですね。
Fantasyは司くん最初に1回だけ出てきたんですよね。
まぁ~司くんですから、つくしちゃんを嫁にもらう!と決めたら別に意識体と1回しか会おうが会わなかろうが、嫁にしちゃいますよね。
というか、4人は神様でしたか!!

情熱的な火の神の司くん。
最初出てきた時は、なぜ司くんがストレートヘアなのか?と思いましたが、類くんを意識してストレートにしてしまったなんて!
司くんがストレートなのは、つくしちゃんへの愛情だけで充分です。
司くんはクルクル頭が似合ってますよ。

司くん体力だけは凄そうだから、このまま行ったら火の神が増えること間違え無し!
司くん、つくしちゃんは普通の女の子だから、加減してあげてね💕

2017/10/26 (Thu) 00:36 | EDIT | REPLY |   
lemmmon  
スリーシスターズ様

こんばんわ(*´∀`)ノ

えへへF4を神にしちゃいました✨
そして司は情熱、真っ赤に燃える🔥炎の神にしました。
いちゃつく度に温度が上がるってね、なかなか迷惑なCPに仕上げてみました。

ストレートヘアーはやはり濡れてないと…ですか。濡れてたら色気も違いますからね。
失礼しました。
遊び過ぎてしまいました。
|д゚)ノ

それから火の神の妻になったら、つくしも普通の女の子にはならないのよ。
だから司は手加減しなくていいの。
ファイヤーな営みをしてるのよー
↑どんな営みやねん(⊂・`ω・´)オイッ

2017/10/26 (Thu) 21:43 | EDIT | REPLY |   
さとぴょん  

lemmmon様♡
火の神、司のお話
ありがとうございました♡

火の神なんて、ほんと司にぴったりでしたね。
魔法のような力を使えるところも凄かったです。
照れ屋ながら、ドスンと構えているところもあり、
なかなか頼もしかったです。

上目遣いに弱い火の神
イチャイチャすると、
途端に周りの気温が上がるところが
面白いですね( *´艸`)♪

チュッチュという表現
久しぶりに見ました(≧▽≦)♡

パワーを感じるお話♡
ありがとうございました♡

2017/11/08 (Wed) 15:00 | EDIT | REPLY |   
lemmmon  
さとぴょん様

コメントありがとうございます🎵

火の神は司にぴったりですよね~
体温が高い設定だし、着火するように怒りますからね。

ちなみにお話には出さなかったのですが、
火は燃えるので、服が邪魔になったら脱がすのではなく、ボフッ🔥って一瞬にしてまっぱ○かに…
( *´艸`)クスクス

だから営みはファイヤーなんですよー
火って超便利。

2017/11/08 (Wed) 16:46 | EDIT | REPLY |   
kachi  

lemmmonさん
こんばんは!
司くん最終話ありがとうございました♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪

司編はfantasyの世界そのままのツクシ姫のハッピーエンドのお話でしたね♡
サラサラ黒髪登場には総ちゃん?と思いましたが、ツカサ王子改めツカサ火の神だったとは!
F4みーんな神様だったとは驚きました!

昔のペンダントを渡した時の記憶含めてちょっと忘れっぽいツクシ姫だけど、幸せそうで私も嬉しいです。

やっぱり最後につくつくのお話にコメントしたくてこーんな時間になってしまってごめんなさい!

では、では!
とーっても素敵なイベントありがとうございました😊


管理人さま
いきなり、たくさんコメントしちゃってごめんなさい!
お付き合いありがとうございました♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪

2017/11/10 (Fri) 23:59 | EDIT | REPLY |   
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