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類×つくしver



気づけばツクシは
”その場所”に、一人で立っていた。

ふわり

吹き抜ける風が心地好く、艶のある黒髪をサラリと靡かせる。

初めて訪れた場所なのに...
穏やかな陽だまりのような空気がツクシの周りを包み込み、妙に落ち着いていられる。


─ここ...何処なんだろう......

周りを見れば、人工的でありながら...
そこは日頃から、あまり人には使われていない空間のようで...


─でも...なんか好きだな…ここ...

踊り場のように開けた場所から見る青空の向こうには、遠くたくさんの緑が繁っている。ツクシはそこに向かい一人、大きく息を吸い込んだ。

と、背後に...

不意に人の気配を感じたツクシは、慌てて振り向く。

だが

「はっ?? あれって、足だけ...//?」

気配の主、階段の上から覗くのは、無造作に投げ出された二本の長い足...

何故か奇妙なデジャヴを覚えつつ、ツクシは用心しながら、その階段を一段ずつ上って行く。


「...あのぅ// …そこにどなたか、いらっしゃいますか~//??」

だが、恐る恐る声をかけても、”足”はピクリとも動かずに...

やがて上り終えたツクシは、そこにぐっすりと眠る、一人の男を見つけた。


─うわ...//
こんなところで、よく眠れるな...///

思わず覗き込めば、なんともはや...見目麗しい長身の男性が一人、すやすやと夢の中...


「っ... 綺麗な人...//」

心の声が思わず口に出る程に...

その整った目鼻立ちは、女である自分よりもずっと美しく...

うっとりと見惚れていたツクシの脳内に、
一瞬鮮やかに甦る、記憶の断片───


─あれ...あたし、何処かでこの人と...

と、突然...


───『つ……くしっ』───


寝ている筈の目の前の男の、恍惚とした表情が浮かぶ...

あれは...

ええっ//、嘘っ/////!!!

突然、めくるめく熱い情事の記憶に襲われ...
ツクシは羞恥心に耐えきれず、目を瞑り頭を抱えてその場にしゃがみこんだ。

その途端、頭の中に響くのは、馴染みの二人の話し声───


─『お姉様!どういう事です!? 姫の中に、まだ前の世界の記憶が残ってるじゃありませんかっ!?』

─『ありゃ??そっかぁ、まだちょ~っとツクシ姫には強烈すぎたかな~っ♪ …よしっ、それじゃ仕方無い♪サクラーコ、あんたの魔力を分けて!姫が記憶を忘れるように...!!』

─『畏まりました...もうっ、いきますわよ!!』


瞬間

ビクンッ!

ツクシの頭の中で、強烈な眩い光が弾け飛ぶ───


*


やがて


「...あれ... あたし...」

ぼんやりと目を開ければ、再び目の前にはすやすやと眠る一人の男の姿...


「この人...」

何処かで見たことのあるその寝顔は、今度は記憶の中にある、まだあどけない”天使の寝顔”に上書きされている...


「あっ!そうだ//! ルイ王子じゃないの...//」

どうしてすぐに思い出さなかったのか不思議な程に...
何故か今、ツクシの中に鮮やかに甦るのは、故郷のマッキーノ王国の思い出だった。


─そういえば、私...
王国を救う為、魔法で飛ばされたんだっけ...

あれから既に、幾つかの違う世界を渡り歩いたような気もするが...

いくら思い出そうとしても、不思議とその一つ一つの記憶はあやふやで...あの時、二人の魔法使いに飛ばされた以後の記憶は、定かでは無かった。

だから
これ以上、考えても詮無きことと...

つくしは再び、目の前の寝ている王子に目を向ける。


─フフッ、よく寝てる...//

一人で飛ばされたとばかり思っていたのに...この世界には、何故か幼馴染みの”彼”がいるのだ。その喜びに思わず頬を緩ませるツクシだったが...


実は、魔法による記憶の混同───

そして、あまりに瓜二つの男の寝姿に...この時のツクシは大きな勘違いをしていた。



「相変わらず...睫毛長いなぁ...//」

目の前の男がルイ王子だと疑いもせず...ツクシはその隣に腰を降ろし、美しい寝顔を堪能する。

幼馴染みの四人の美しい王子の中でも、彼はいつも個性豊かな三人の影にひっそりと隠れて...それでいて独特の空気感を持った、不思議な王子だった。だが、時折ツクシにだけ見せてくれる屈託のない天使のような微笑みは...それだけで、いつもツクシの心を豊かにしてくれていた気がする。


─なんだか、久し振り...//

こんな風に彼の美しい寝顔を間近で見るのは、いつ振りだろうか...


─フフッ、少しだけ...//

懐かしさで、思わず触れてみたくなって...
ツクシはそっと男の頬に指先を伸ばした。


と、


『...きの...』

切なげに呟かれた”王子”の謎の言葉に、ツクシはビクリと身を竦める。

その途端


─えっ//...


一瞬、苦しそうに眉根を寄せた男の、閉じられた瞼から...


一粒の涙が
スッと美しい頬を伝い、静かに流れ落ちた。


─何…どうして...//


初めて見てしまった彼の涙に、ツクシは動揺を隠せない。

いつもいつも、何を考えているかわからない、マイペースなあのルイ王子が...時折寂しげな顔を見せるのは、冷たく閉ざされた氷の国で育った為だと思っていた。だが、ツクシを見るときはいつでも、ふわりと暖かな微笑みを浮かべていた筈...


それなのに
なんと辛そうな、切ない涙なのだろう...

ツクシはその涙を拭うべく、そっと王子の頬に手を伸ばす。




『...ん...』

「あっ//」

ツクシの指が頬に触れた事で
男は夢から目覚め、ツクシをじっと見つめて......


─うわ///…吸い込まれそう...//

思わず見惚れるツクシは、自然と見つめ合っている事にも気付かない...

すると


『...牧野?』

「へっ//?」


─嫌だ///!わ、私ったら///…!!

『マキノ』という言葉の意味はわからぬが...ツクシは慌てて、無礼にも一国の王子の頬に勝手に触れた指先を、慌てて引っ込めようとする。


だが

『待って!』

逃げるその手は簡単に掴まり...慌てたツクシはパニックのまま

「ご、ごめんなさいっ///! あのっ、殿方に勝手に触れるなど不躾でしたわね///…私///...」


すると、
驚いたように見開かれる、ビー玉の瞳...


『何...言ってんの...?
ていうか、あんた... なんで高等部の制服...』

「は、はいっ//??」

─セイフク、って...何///??

言われてまじまじと自分の姿を見れば、膝上のプリーツスカートにブレザーという出で立ち...

しかしつくしは

─この服... 知らない...

これをこの世界では、『セイフク』と言うのだろうか...


まるで今、初めて目にするモノのように...自分の格好を訝しげに眺めるツクシの態度に、男は怪訝に眉根を寄せる。


『...ねぇ、牧野? あんたって...』

「あの... さっきからその、『マキノ』というのは何なのです//? 王子...」


その瞬間
男の手にグッと強い力が加わり、目の色が変わった。


「痛っ//」
『ねぇ...!?』

だが、急に変わった鋭い眼差しに、ツクシは青ざめて男を仰ぎ見る。


「あのっ// …王子、離してっ//...」


『...あんた、一体誰?』



─え......?


ツクシの背筋を、一瞬にして冷たいものが伝ってゆく。


─もしかして...この人......
"ルイ王子"じゃ無いのっ///!?!?


全てが自分の勘違いだと悟ったときには、もう、後の祭りで...



*

「...という訳で、私は一人、彼女達に魔法で飛ばされまして...」

話を終え...
恐々上目遣いで隣に座る男を見上げても、男はまるで繊細な彫刻のように、難しい顔をしたまま、ジッと何かを考え込んでいる...


─ハァ...信じられる訳、無いよね...//


結局───

下手を打ったツクシは、男に問われるがまま自らの王国の話をする他は無く...

しかしどうやら男の反応を見るに...
”魔法”の概念自体が、この世界では眉唾物であるらしい。
ならばツクシの話は、言わば”怪しい事この上ない”といったところ...


─頭がおかしいと、思われただろうか...//

見れば見るほど、こんなにルイ王子にそっくりなのに...

恐らくは、真実を話しても...目の前の彼の理解は決して得られまいと、ツクシは内心ガッカリしていた。

せっかく王国を救うために、一人、飛ばされる決意をしたのに...


─ん?

あれ...??

...でもそもそも、私は飛ばされた先で、何をすればいいんだっけ??

王国の記憶は鮮明でも、そこだけあやふやな事に気づき...ツクシは一人頭を捻った。

と...


『プッ///!...クククッ///...』

突然隣の男が腹を抱えて笑いだし、ツクシは驚く。


「あの///?? な、何か...///??」

『いや///、悪い...ククッ//、でも、何のために来たかわからないなんて///…ハハッ//!あんた、間抜け過ぎっ///!』

「なっ////!! し、失礼なっ///!!ですからそれは//...」

しかし、覚えていないものは致し方ない...

そう言おうとして、ツクシはその笑顔に見惚れた。


─やっぱりこの人も、笑うと天使みたいなんだ///…

以前からどうにも弱かった、この笑顔...
つくしは思わず、ぽーっと見とれていると


『クスッ、とんだお姫様だね』
「へっ///?」

『ツクシ姫、じゃないの...? あんたの名前...』
「嘘っ////!!あのっ、し、信じて///くれるのですか///!?」

あまりの喜びに、思わず身を乗り出すように話しかければ、男の瞳は優しく細められる。


『ん...何だか突拍子も無い話だけど...
あんたが...嘘をつけるとも思えない...』

「う、嘘じゃないのよ///!!でもっ///ここは全く別の世界みたいだし//、まさかこんなに早く信じて貰えるとは//」

『クスッ、信じるよ』

ビー玉の瞳は、ツクシを真っ直ぐに見つめる。

「あ、ありがとう///嬉しいわ/// …でも、どうして...///」

だが問いかけに、男の笑顔が僅かに曇った。



『あんたが似てるから... かな...』

それだけ言うと、男はフイと目を反らして押し黙り...

ツクシの心は何故かチクリと痛んだ。


─今の、何...?
私が...誰に『似てる』っていうの...//?

いつの間にか、男の笑顔から無垢な輝きが失われた事に...
ツクシは、妙な胸騒ぎを覚えて...。


「あの...// 貴方の、お名前は...」

『俺は... 花沢 類...』

「えっ//!! 貴方も、ルイっ///!?」

まさかの同じ発音。
ツクシが驚いて声を上げれば、類も興味深げに

『...何? 』

「いえ///、その...// 実は///...」


そこから───

ポツリポツリと話し出す、ツクシと幼馴染みの四人の王子達との昔話に、類はただ黙って静かに耳を傾けていた。だが中でも、類と似ているルイ王子が、同じように昼寝が大好きな事を告げれば、


『パラレルワールド...』

「へっ?」

『いや、その王子って奴が...ホントに俺と瓜二つならさ... 小説なんかには、よくあるパターンだと思っただけ...』

クスリと笑って告げた類の言葉の意味は、ツクシにはよくわからない。



『...でも、そっか...』

「...?」

『そっちの... あんたの国では俺達...
幼馴染み、だったんだね...』

何故かまた、悲しげに歪む類の笑顔に...
ツクシの胸は再びチクリと痛む。

だが、その理由を問いかける前に

『あんたは...』
「えっ//?」

『...その戦争さえ無ければ...
あんたは向こうで... 幸せだった...?』


─幸せ...?

そう問われれば、確かに...

幸せ、だったのだ...
間違いなく...


ツクシは迷い無く、コクンと頷いた。




『そ... なら、良かった...』

向けられた天使のような微笑みは、やはりどことなく寂しげで...

ツクシは堪らず、

「あのっ///!」

『ん?』

「さっきは、その、どうして///...」

あの涙の訳が、無性に聞きたくて堪らない。

だが、いくらルイ王子に似ていても...目の前の彼と自分とは先程出会ったばかり...

迷ったツクシは再び言葉を選びつつ、慎重に口を開く。


「...一体どんな夢を//…見ていたのですか//…?」

『...夢?』

「ええ//…先程... 貴方はなんだか、とても悲しい夢を見ていた気がして...//」




『...あぁ...』


─まただ...

ぼんやりと、虚ろな眼差しを遠くに飛ばす類に、ツクシは何故だか無性に居たたまれなくなる。


『そっか...
多分...もうすぐ、行っちゃうから...かな...』

「...行くとは...どなたが//...?」

声が震えるのが、自分でもわかる。

だが


『俺の...大切な人』

はっきりとそれだけ言うと...
類は再び、儚げに微笑み

ツクシの視線を避けるように、ぼんやりとただ、遠くを見つめて...

胸のざわつきは更に激しく、ツクシの鼓動は鳴り止まない。



どうしても...

比べても、仕方の無い事だが...

ツクシのよく知るルイ王子は、こんな風に悲しく笑うことはない。

─もっとずっと...
楽しそうに、笑っていたのに...///


そんな王子に瓜二つの彼は、間違いなく何かを抱えている...

そして...その原因は恐らく...



─『マキノ』

彼は先程から、何度かツクシの事をそう呼んでいる。

ならば、その『マキノ』という人物こそが...
彼の心に、陰りを落とす者なのではなかろうか...


「あの...// その人は、もしかして...『マキノ』というの//? さっきから貴方、私の事を、そう呼ぶから...//」

僅かに震える手で、スカートの裾をきつく握り締めた。

だが、聞かれた類は、ただ静かに...
ツクシを真っ直ぐに見つめて...


『牧野は...親友の、彼女』

「...えっ//」

意外な言葉に驚くツクシをよそに、類は静かに語り始める...


『いろいろあって、あの二人はね...結ばれるべくして、結ばれた二人...』

ビー玉の瞳は悲しげに揺れる。


『俺の親友...司は、遠い空の向こうで、一人で頑張ってて... 彼女のお陰で、アイツは変われたから...』

「そう...なんだ...」

胸が苦しくて、ただ相槌を打つことしか出来ない...

それでも

ツクシはわからないなりに、類の語る言葉の意味を、そして彼の中の思い出を、理解しようと懸命に耳を澄ませる。


『で、もうすぐ... 約束の4年が来る』

「えっ」

『司が...俺の親友がさ...
海の向こうから、彼女を迎えにね...帰って来るんだ...』


─なんて
悲しい目をしているのだろう...

やんわりと笑ったその横顔は、とても優しすぎて...
同時に口に出せないたくさんの想いを抱えているようで...

ツクシは何故だか、無性に泣きたくなった...。


「でも、その彼女///…『マキノ』という人のこと...
貴方は、慕っておられるのでは///...」

脈打つ鼓動を必死で押さえながら、ツクシは思いきってカマをかける。

だが、類は───



『そうだね。…好きだよ』



余りにもストレートな物言いに、ダメージを受けたのはツクシの方で...

「...では、何故///!?」


『好きだけど、司も大切な親友...
だから俺にとっては、どちらも大事...』

当然の如く言い切り、類はそのまま瞼を閉じた。

まるで全てを悟ったかのような、その全ての言動が...
何故だかツクシの胸を、より一層、切なく締め付けていく...


「では、好きなのに...// 何も言わないで、貴方はただ、彼女を親友の元へと送り出すのですかっ//!?」

つい口をついて出るのは、類に対して棘のある言葉なのに


『言わない』

─…っ///...


『だってそんなの...牧野を困らせるだけだからね...』

類が優しく微笑む度に、ツクシの中に積もる、やるせない想い...


「でもっ///!」

『いろいろ...あったんだよ、俺達は...』

そうしてまた、遠くを見つめる類の横顔を...

何も知らないツクシは、ただ歯痒い想いで見つめる。
だが思いきって聞いてみた。


「貴方は///… 本当に、それでいいの//?」

『...いいも何も... 最後まで見守るのが俺の役目だから』


だが
ツクシの中に溢れる、もうひとつの思いは...


─違う...//

こんな笑顔、本当の笑顔じゃないっ...//
だってさっきから、人の事ばっかり...///


もう、耐えられなかった。


「違うわ...」

『えっ』

「違うでしょう!ハナザワルイっ///!!」

『...!』

急に大声を出したツクシを、類は驚き見つめ返す。


「本当に...貴方はそれで満足ですか//!? だって、それじゃあ貴方の想いは、一体どうなるのです///!?」

『......』


咄嗟にツクシが叫んだ、その呼び名───

ビー玉の瞳は、これ以上無いほど大きく見開かれて...


「あんた...今...」

『しっかりしてよ///!!どうしてそんな風に笑うの//!? さっきだって、ここで彼女の夢を見て、一人で泣いて///…っ///!』

つい余計な事まで口走ったかと、慌てて口を押さえるも...

類は未だ、ツクシを茫然と見つめたまま......


『まき... いや、ツクシ、姫......』

震える類の手が、そっとツクシの頬に触れる。



『何であんたが... 泣くわけ...?』


─え …?

「あ...、たし...//?」

気付けば、ポロポロと頬を伝う涙に...
ツクシ自身も驚き呆然とする。


「だって//…それはハナザワルイが///…泣かない、から///…っ///...」



情けない...

辛いのは、私じゃない...

そう思うのに、後から後から...
溢れ出る涙は少しも止められずに...

ツクシは自分の無力さと恥ずかしさに、顔を覆うしかなく。

だが、


『...ホントに…あんたって...//』

類はふわりと微笑んで


『ありがとう...』

耳元に優しく響く、声色の切なさに...ツクシの嗚咽が漏れた。


と、


ふわり


「えっ////…あ、のっ///...」

『ごめん... 少しだけ、このままで...』

類の腕がツクシの身体を優しく抱き締める。

と、ツクシから漂う甘い香りに、類はクラリと目眩を覚えつつ...
腕の中の、その存在を確かめるように、一層きつく抱き寄せた。

類に応えるように...
ツクシのか細い腕も、同じく類の背中にそっと回されて...

非常階段で二人
座ったまま、かたく抱き合いながら───

類は不思議な暖かさすら覚えて...一人静かに目を閉じる。


今、この腕の中に居るのは、類のたった一人の特別な「牧野つくし」によく似た...けれども、全く別の世界から来た、「ツクシ姫」だという...

普段の類であれば、一笑に付すような
馬鹿馬鹿しい、陳腐なお伽噺じみた彼女の言葉を...

なぜか素直に信じられたのは、彼女があまりにも、
昔の『牧野つくし』であったからに他ならない。

今まで事あるごとに、側で支え続けていた大切な存在...


牧野つくしは、類の全てだった。

それまで無気力が当たり前のように過ごしてきた、つまらない日々に...
力強く張りを与え、否応なしに目映い光を放ち...

ちっぽけな、普通の女の子に見えても
彼女は、いつも困難に立ち向かい、誰よりも力強く...

そして

類が初めて
心から『護りたい』と思った、唯一の女(ヒト)......


だが、類がその気持ちに気付いた頃には、時既に遅く...。
それでもやはり、類は彼女の笑顔を見たくて、いつでも”友達”として彼女を支え、側に居続ける道を選んだ。

彼女の隣でどんどん変わってゆく、親友の司の姿も含めて───

いつしか類の中で、二人の姿は眩いほどの『憧れ』だったから。

だからこそ、そんな二人を護れるのは、この自分しか居ないと...
見守る役目を、自ら引き受けたような気もしていたけれど───


─もうすぐ自分は、彼女の側にも居られなくなる...


現実の、どうしようもない虚しさに...

大学へ進んでも尚、足は自然と
この『思い出の場所』へ向かい、彼女を求めてしまう。


だから...


『ここ...非常階段』

「...え」

類はツクシを抱き締めたまま、静かに秘めた想いを語り出す。


『この場所で昔... 彼女と初めて、出逢ったんだ...』

「...そう...なんだ...」

少しだけ、胸が痛い。

だが類が...
この優しい人の切ない涙が、それで止められるのならば...


─全部、受け止めてあげたい...//

自然と背中に回した掌は、類の大きな背中を労るように優しく擦り続ける。

そんなツクシを抱き締めながらも、類はまるで、小さな少年のように...


『...だから本当は、期待してたのかな...』
「......」

『彼女が...牧野がまた、この場所に来るかも、って...』
「...うん」

『でもさ、二人を応援したい気持ちは、本当...
なのに、女々しいよな...俺』

「そんな///!女々しくなんか///」

慌てて顔を上げれば
間近にあるビー玉の瞳は、今はツクシの姿だけを映している。


私は、『マキノ』では、無い...//

だから...
私は、私の気持ちを伝えたい...

「ちっとも女々しくなんか無い//…
ハナザワルイ//?…貴方はきっと...誰よりも彼女を愛した...深い愛の持ち主なのだと思います//」

真摯な漆黒の瞳が、真っ直ぐに思いの丈を告げていた。


と、

ビー玉の瞳は...

初めて捧げられた言葉の優しさに、僅かに戸惑い、静かに揺れて...


『あのさ...』

「ええ...」


『俺、本気で... 好きだったんだ...』

「...わかってる...」


見つめ合う互いの視線は優しく絡み合い、そのまま...

どちらともなく
そっと触れ合うだけの唇は、けれど一瞬で離されて...


『...ごめん、俺...』
「謝らないで...//」

『...姫...?』

雰囲気に流されたつもりも無いが...
類は改めて、目の前の『彼女』を見つめる。

『ツクシ姫』と名乗る、その女(ヒト)は...

つくしとそっくりな漆黒の瞳の中に...
しかし彼女は類だけを映し、類だけに愛しげに微笑んでいた。

類にとって、それはまさに、白日夢のような光景───


「...身代わりでも、いいのです...」

『えっ...』

「それで貴方が...ハナザワルイが、心から、笑えるようになるのなら...///」

微笑むツクシは、まるで聖母のようで───


─そっか......俺、馬鹿だな

彼女は...
牧野じゃ、無い...//


『あんた...でも、何でそこまで...//』

「フフッ//…何ででしょうね///… 私にもよくわからないのですが...///
ハナザワルイ... 貴方を何故だか、放っておけなくて...///」

─一目、見た時から...///

はにかんで伏せた横顔は、あまりに神々しく、美しく...


類の中で、再び
穏やかな時が動き出す予感がした。



『あのさ...ツクシ姫』

「はい...//?」


『ねぇ、それって...
恋っていうんじゃないの...?』

「なっ////…!」

カマをかけた言葉に急にあたふたと慌てる”姫”が、今は愛しくて堪らない。


『プッ///!あんたって、ホントに//...』

「わっ///、笑わないでよっ///!!」

『いや、ククッ//...泣いたり笑ったり怒ったりさ... ホント、忙しいよね...』




ケラケラと無邪気に笑い転げる美しいその人を...
ツクシは怒ることも儘ならず、ほんのりと頬を染めて見上げる。


そう
ずっと見たかったのは、この笑顔...//

ようやくじわりと溢れる喜びに、ツクシは今、自らの想いを自覚して...


「あ、あの///...」

『ん?』

笑いすぎて目尻を拭う何気無い仕草さえ、愛しく思える...


─そっか...///
やはり私は、この方の事が...////


「あのね、わ、私が////、もしも...////」

─貴方の事を、好きだと言ったなら...///

高鳴る鼓動に、ツクシの身体は徐々に光を帯びて...
意を決して告げようとした、その時だった。


**


キィーッ...


『花沢類~っ//... あ!やっぱりここに居た!...
って...えっ!?』

聞き覚えのある能天気な女性の声に───
ツクシの肌はゾクリと粟立つ。

そのまま恐る恐る、振り向く類と共に出口を見やれば...


『...っ///!? は、花沢類!?...その人って///...』

『ま...きの...』

類を挟んで、まるで合わせ鏡のような異様な光景に...
彼女が「牧野つくし」だと、ツクシは一目で理解した。


だが、


『その子///…だ、誰っ...///!?』

驚きの余り言葉も上手く出ないのか...”牧野つくし”は真っ青な顔で、並んで腰掛ける類とツクシを見つめている。

だがその時...

彼女の瞳の中に宿る、僅かな『嫉妬』の感情に...
ツクシはどうして、気付いてしまったのだろう。


『牧野あのさ、気持ちはわかるけど...ちょっと落ち着いて...』

類の冷静な言葉も、自分と瓜二つの女を目の前にしては少しの効き目も無いようで

『ねぇあなたっ//、そんな高等部の制服なんか着てっ///!そこで何してるのよ///!?』


それを言うなら、なぜ貴女はこの場所に一人で来たのか───

齢十七のツクシに比べ、少し年上であろう彼女は、ほんのりと薄化粧まで施して...
ツクシよりも更に伸びた髪を美しく結い上げ...
更には、丈の短めなフレアスカートから膝下がチラリと覗く様子は、明らかに......


「...破廉恥な」

類より他に、約束を交わした男が居たのでは無かったかと...
苛立つ気持ちのまま、ツクシは思わず口走る。

だが、言われた”つくし”は真っ向から

『なっ////!破廉恥って、べ、別にこんなの///普通だよっ///!』

『でも牧野...なんか今日、お洒落してる...?』

『...っ///! は、花沢類//あ、あたしは///別に///...』


小首を傾げた類の一言に、みるみる顔を赤らめる”つくし”に...

ツクシは嫌な直感が当たったことに、気づいてしまった。


「もしかして...貴女、ハナザワルイに会いに...」

『違っ////…別に///…あたしは///...』


戸惑う牧野つくしは、やはりもう一人のツクシ...

ならば彼女もまた...
類に対し、特別な想いを抱えている筈で...


─つまりは、どっちつかず...


ツクシの中に怒りの火種が生まれ、気づけばその場に立ち上がっていた。


「マキノ、さん...ですよね」

『ハッ///?? そ、そうだけど...あなた///...』

「貴女には...将来を誓いあった相手が、居るのでは?」

棘を含んだ言葉につくしが怯んだ。

『い、居るわよっ///!!勿論っ///...でもあなたには関係無いでしょう///!?』

しかし動揺は隠しきれずに...気づいた類が堪らず割って入る。


『ねぇ... どうしたのさ...
さっき話したよね?...牧野は俺の、親友の彼女だって...ねぇ、牧野?』

喧嘩腰になる”ツクシ”の意図がわからず、類は二人に向け微笑む。

だが



止めて...

そんな風に、また...
悲しい笑顔で、”彼女”に笑いかけては駄目っ...///


ツクシは────

ただ、類を守りたかった。
自分と同じ顔の、目の前の女性が...

きっと類を、一番に傷付けている...!!


『それよりっ//…あ、あなたは一体誰なのよっ///!?』
『待ちなよ牧野? 別に、彼女は何も...』


『花沢類から離れてっ///!!』

「は…?」『!?』


気づけば”牧野つくし”は、混乱と怒りで我を忘れているらしく...

『あ、あんたは誰なのよっ///!?しかもその制服...
高等部の頃のあたしの真似なんかしてっ/// 花沢類を騙そうったって、そうはいかないんだから///!!』

何故か検討違いの『正義感』に燃える、自分と同じ漆黒の瞳が、ツクシをさらに苛立たせた。


「...何も、知らないくせに...//」


確信があった。
類の美しい涙を、きっと”彼女”は知らない...

それは部外者のツクシにとって、酷く許しがたい事で...


『なっ///!? に、偽物の癖にっ//!あんたっ、馬鹿にするのもいい加減に///!!』

だが、そのままツカツカと勢いよく降りてくる”つくし”の前に、サッと立ち上がるのは、花沢類その人...


『だから落ち着きなよ! 彼女は別に、俺を騙そうなんて思ってないから//!』

ツクシを庇い珍しく声を荒げる類の言葉に、今度は”つくし”が驚き戸惑う。


─ハナザワルイ...//


その瞬間

ツクシの脳内に再び彼女達の声が響いた。


─ちょっとお姉様っ//!? 本人同士が鉢合わせとは、本来ならば決してあってはならない事ですわ!!

─わ、わかってるってばぁ///!!ほら?ちょ、ちょっとした手違いで///
さっきの魔力が強すぎたかなぁ//…ええいっ、ヤバいっ!飛ばすわよ~っ//!!



*


─そんな...嫌だ...

嫌だ嫌だ...
せっかく今、私は...っ///!


ザッ、ザッザッ、ザー───


ツクシの視界にノイズが入る。


『...ナザワ、ルイ...っ//』

「...なっ!ツクシ姫!?」


愛しい人の笑顔が、再び目の前で悲しみに歪んでゆく。

だがそれは、先程とは違い
彼が自分の身を案じてくれているからだと...
ツクシにはわかった。

それが無性に嬉しくて。けれどやっぱり、切なくて...

消えゆく意識の中...


ふわり


後方に倒れゆくツクシは
せめて、類に届けと懸命に手を伸ばした。

そして類も、ツクシに向かって...


ー あと...少し...//


あぁ... それなのに......


『ハナザワルイ!! いつか、また...//』


─きっと、何処かで......!


最後まで言えぬまま、指先から透明に変わる...


やがて

ツクシの身体は、みるみるうちに目映い光の泡粒に変わり...


──ポンッ───






ツクシが消え去った非常階段...

立ち竦む類の掌には、たった一粒
清らかな涙だけが残されていた───





















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Comments - 8

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スリーシスターズ  

こんばんは。

次にツクシ姫が飛ばされたのは現代の類くんがいる世界。
前の世界の記憶はなくなるはずなのに、強烈すぎる経験だったのでしょうね。
ツクシ姫同様、私も強烈に記憶に残っていますよ!

魔法をかけなおして気を取り直してもう一度。
現代の類くん切なすぎます。
つくしちゃんを想う気持ちが切々と伝わってきます。
なんか、司くんとつくしちゃんの4年後の再会の裏では類くんこんな想いで過ごしていたのかな~とサイドストーリー読んでいるみたいでした。

でもでも!現代のつくしちゃんとツクシ姫が鉢合わせなんて!!
シゲール嬢の魔法の力よりも前の世界の魔力の方が強かった!?

最後、類くんの所につくしちゃんが戻ってきたところからは凪子さんの類×つく愛を感じました。
ツクシ姫とつくしちゃんのプチバトルも面白かったです。
ツクシ姫もつくしちゃんも類くん好きなんですよね♥

2017/10/20 (Fri) 21:40 | EDIT | REPLY |   
kachi  

凪子さん
おはようございます(o^^o)
お話の更新ありがとうございます😊

ツクシ姫 類くんの元へ
類くんのもうすぐ司の元に行ってしまうつくしへの気持ちが切ないですね。
そんな類くんの気持ちに知り寄り添うツクシ姫がいじらしいです^ ^
ツクシ姫は類くんに恋をしましたね♪

つくしちゃんの自分そっくりさんのツクシ姫への嫉妬は可愛らしいけど、司好きな私としては正直複雑な気持ちです(・_・;
司がつくしに一途なようにつくしにも司に一途でいて欲しいから^ ^
類くんとつくしは恋人ではなくても特別な関係だから、恋心ではなくても嫉妬はあるのでそんな風に思います。
凪子さんの類くんに味方してあげられなくてごめんなさい。
パラレルワールド みんなが幸せになれる世界があると良いですね♪
やっぱりそれが二次の魅力ですよね(o^^o)

2017/10/21 (Sat) 07:25 | EDIT | REPLY |   
凪子  
スリーシスターズ様🎵

コメントありがとうございます🎵

先ずはかなりの長文類つくをお読み頂き(^^;💦どうもありがとうございますm(__)m💦💦

ふふっ。そうですね🎵
衝撃の甘い世界❤の後は、いきなり現代へ...

パラレル×魔法とくれば、かなり自由な展開なので...はい。原作での切ない類の想いを叶えるべく、このような世界にしてしまいました。司を好きだけれど類も頼りにしているつくし(原作寄り?)と、それを許せないと思う、二人のつくし対決...。
面白かったと言っていただき、ホッとしております(^^;💦

それにしても、スリーさん凄いです♪
大好きな司くん以外にも暖かいコメを頂き、本当にありがたい限りです(*´ω`*)❤
まだまだパラレル世界のお話は続きますので、どうぞお楽しみ下さいませ🎵

ありがとうございました❗

2017/10/21 (Sat) 15:14 | EDIT | REPLY |   
凪子  
kachi様🎵

コメントありがとうございます🎵

うふふ。ですよね(^^;
つかつく派には何故?となっちゃうかもしれませんが、類つくではこのふらつくつくしは、結構な鉄板かもしれません🎵(^^;

一途な類がとても切なくて、類を絶対幸せにしてあげたい!…が、恐らく類つく支持者の原点なので(/▽\)♪
なのでここではパラレルと魔法を思う存分使って、原作での分岐??つくしを二人にしてしまいました(^^;

心を痛ませてしまったらすみません💦
でもたくさんの幸せなつかつくさんのお話もありますので、どうかそちらで癒されて下さいませ🎵(*´ω`*)

そしてkachi様も🎵
ほぼリアルタイムに近い形で、全てのお話を追って下さり、どうもありがとうございます🎵
これからもたくさんのお話更新続きますが、くれぐれも体調にお気をつけて🎵
お付き合い宜しくお願い致します❤

どうもありがとうございました🎵

2017/10/21 (Sat) 15:38 | EDIT | REPLY |   
さとぴょん  

凪子様♡
類つくの聖地「非常階段」でのファンタジー
ありがとうございました(*^^*)

ツクシ姫が、類のために涙を流すシーン

類を思って怒鳴りつけるシーンもよかったです。

牧野つくしが、ツクシ姫に嫉妬するところもなかなか見応えありました。

これ続き読みたいっすね。

お話ありがとうございました(*^^*)♡

2017/10/25 (Wed) 14:17 | EDIT | REPLY |   
凪子  
さとぴょん様🎵

コメントありがとうございます🎵

わーい!
いやん、嬉しいっ🎵ヽ(*´▽)ノ🎵

続き読みたい!
…もう何より嬉しいお言葉です!m(__)m

…って、無いんだけど(/▽\)笑笑

そうですねぇ♪
類つくの聖地(笑)でのこんなパラレルも、いっそいいんじゃないかと…
原作つくしちゃんとのご対面を果たしてしまったツクシ姫です(^^;

もともとは初恋の君ですし?
ほら。あの方の世界から飛ばされた❤ツクシ姫ですから… もう遺伝子レベルで類に恋しちゃいましたm(__)m❤

いろいろと類つくの野望も盛り込んだので(笑)書いている方は楽しかったのですが、読んだらややこしくないかしら?
と、少し心配しておりました(^^;

うふ。
とても嬉しいコメを頂き、恐縮です♪(/▽\)♪

そしてまだまだ続きますよ~🎵

ツクシ姫、どんどん飛ばされちゃいますから(笑)さとぴょんさんも一緒に付いてきて下さいね?(*´ω`*)

どうもありがとうございました!!



2017/10/25 (Wed) 15:56 | EDIT | REPLY |   
haoto  

初めまして、こんばんは、haotoと申します。

とても切ない類の心情を赤裸々に語っていましたね。
ツクシ姫じゃないけど、とても胸の痛くなる想いです。
原作でも二次でもこういう場面は辛いですね。
私も類派ですから、類とつくしがくっついてほしかったと未だに思います。

この話を読んでいると凪子様の『アゲハ蝶』を思い出します。
あのお話をもう一度読みたくなってきました。
また凪子様のブログにお邪魔させて頂きます。



2017/10/26 (Thu) 19:50 | EDIT | REPLY |   
凪子  
haoto様🎵

初めまして🎵今晩はm(__)m

ご訪問&コメント、どうもありがとうございます!!

おぉ🎵
類派!嬉しいお言葉です(*´ω`*)

そうなんですよね...
1番近くで支えながらもつくしの幸せと笑顔をただ願うというスタンスが、類の魅力でもあり、とびきり切ないところでもあるので(泣)

このパラレル世界では、類の想いをきちんとわかっているツクシ姫に、原作寄りのつくしを叱って頂きました(^^;💦

うふ。パラレル様々でやりたい放題ですm(__)m💦💦(笑)

ただ切ない想いは、今回はパラレルなので❤
最後はあの方に救って頂きましょう🎵(*´ω`*)

そして、吃驚しました💦💦
お読み下さってたのですね💦💦
ありがとうございます❤m(__)m

まさかあの頃は、自分がこんな風に作家の皆様とリレーに参加させて貰う日が来るなんて、露程にも思わなかったです(^^;💦💦

懐かしいなぁ🎵(*´ω`*)
なんだかhaoto様のお言葉で、また初心に帰れそうな気がします🎵🎵

リレーもあと少しですが、最後までどうぞお楽しみ下さいね!!

どうもありがとうございました🎵

2017/10/26 (Thu) 22:47 | EDIT | REPLY |   
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