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おかしい。
全くもっておかしい。

晴れてつくしの心を射止めた総二郎は、目の前の状況に首を傾げる。


告白を受け入れて貰えた後、少しずつだが進展はある。
つくしの敬語がなくなり、小学校時代からの友人だという優紀に、「彼氏」として紹介された。
総二郎から見れば少々、色気が足りないが、一応デートも重ねている。
…まぁ遊園地やら動物園やら…子供が喜びそうなところばかりなのだが。

それでもつくしが喜ぶ姿を見れば、総二郎としては素直に嬉しい。
手を繋ぐと一瞬驚いて、でも真っ赤になりつつその手をぎゅっと握り返されれば、総二郎の心臓も早鐘を打つ。
ただそれだけのことで…と、我ながら呆れてしまうのだが、そんな自分も満更悪くない。


ところが…。


ここ最近、家元襲名のため、慌ただしくなってきた総二郎。
今日も地方での仕事を終え、とんぼ返りで帰って来た。
…までは良かった。

3日ぶりの恋人に会うため、“まき乃”のドアを開けたそこに居たのは…。

「お、なんだ。来たのか」「来ないかと思った」「よっ、お疲れ」
つくしの「いらっしゃいませ」より先に聞こえる、親友達の声。
しっかりちゃっかり、“つくし・最前列アリーナ席”をキープして、食事を堪能している。

「最近、“まき乃”の料理を食べていないからな」
-司っ! お前は入院中、ずっとつくしが作った弁当を食べていただろうがよっ!
驚異の回復力で早々に完治させた司は、退院後も頻繁に“まき乃”に通っているらしい。

「牧野、あれ食べたい。黄色いクルクルしたやつ」
-類っ! それは“玉子焼き”だっ! いい加減に名前覚えろっ!
小首を傾げつくしにねだる類は、時折“まき乃”の手伝いまでしているらしい。

「お袋が『つくしちゃんは元気~?』って聞くんだよ」
-あきらっ! なにお袋さんをダシに使ってるんだよっ!
毒も害もない顔をするあきらは、母親の名を使って色々つくしを呼び出しているらしい。

彼氏である総二郎を差し置き、つくしに接近する3人。
そんな親友たちに心の中で目一杯、突っ込む総二郎。
この3人だけでも厄介なのに、最近、更に強敵が増えた。

「あっ、つくしぃ~! 私、“チンピラゴボウ”が食べたい~」
「滋さん。これは“きんぴらごぼう”ですから…」
「先輩の手料理って、特になんてことのない料理なんですけど、つい頂きたくなるんですよね」
「悪かったわね。庶民的で」

やはりカウンター席に陣取る女性陣。

滋は道明寺の取引先である大河原の一人娘、滋。
仕事で会った司に一目惚れし、強引にここまでついてきたのだが、今では司よりつくしを気に入り、すっかり入り浸っている。
それまで気の合う女友達の居なかった滋にしてみれば、ここはやっとできた“親友”のいる場所なのだ。

桜子はつくしがケアセンターにいた頃からの縁。森山を担当する前に担当していたのが、桜子の祖母だった。桜子はその祖母の静養のため、2年ほどスイスに行っていたのだが、先日帰国していた。そこで初めてつくしがケアセンターを辞めたことを知り、慌ててここに来たと言うわけだ。
かなり毒舌なのだが、親代わりに育ててくれた祖母には頭が上がらない。「つくしさんは目上なんだから」という祖母の言葉を受け、つくしを“先輩”と呼び慕っている。

その強烈な2人に優紀を加えた3人は、わいわい食事を楽しんでいる。
それに時折、茶々を入れるあきら。更にマイペースの類と、ゴーイングマイウェイの司。
お陰でつくしは大忙し。
ようやっと総二郎の姿を捉えても、「あ、いらっしゃいませ。西門さん」の一言のみ。

そう。“西門さん”

幾ら総二郎が「名前を呼んでくれ」と言っても、「恥ずかしい」「言えない」と、ずっと呼び方が変わらないままなのだ。


結果的につくしに放っておかれてしまった総二郎を気の毒に思ったのだろう。
宮内が「こちらへどうぞ…」と、カウンターの一番端の席を引く。

おかしい。
全くもっておかしい。
何でこうなっているんだ?
本当なら、恋人同士になって一番楽しいときの筈なのに。

少しでも早く会いたくて、鬼のようなスピードで仕事を終え、必死になって帰って来たというのに…。
当の恋人は、総二郎の名前すら呼んでくれない。

-なんてつれない恋人なんだ…。
楽しげに話すつくし達に、ちらりと眼を向ける。

いつもの総二郎であれば、さらりと会話に加わり、自然と自分に気を持って来させることなど、お手のもの。何しろ、女にかけては百戦錬磨なのだから、息をするより簡単なことだ。
なのに、いざつくしを前にすると、どうにもこうにも上手くいかない。

数多の女と付き合ってきた総二郎だが、よく考えてみたら、きちんとした“両思いの相手”というものは、つくしが初めて。
そういった意味では“初な青年”と言っていいのだろう。
更にはその事実に、総二郎本人は全く気付いていないのだから、タチが悪い。

結局、いつもの手段が使えぬ総二郎は、独楽鼠のようにクルクル動き回るつくしを肴に、酒を口にするのみ。賑やかな会話にも加われないから、グラスを傾ける回数も増える。
かなりのハイペースで酒が無くなることに気付いたつくしが、そっと輪を抜け出し、総二郎に近付いてきた。

「…西門さん。少しは何か食べた方がいいよ…」

こそっと囁き、総二郎の目の前に幾つかの小鉢を置く。
はっとして顔を上げるのだが、当のつくしは滋に呼ばれ、再び賑やかな輪の中へ。
その後ろ姿を見ながら、手近にある小鉢に箸をつける。
総二郎好みの、普段“まき乃”で出すものより薄目の味付けの煮物。並んでいる料理は肉、魚、野菜のバランスがいいだけでなく、総二郎の好物ばかり。海苔の巻かれたおむすびは、夜遅くに食べても胃がもたれないよう、一口サイズにされている。

-前言撤回。なんていい恋人なんだ…。

我ながら単純だと思う余地もない。
いい気分の総二郎は、独楽鼠のようにクルクル動き回るつくしを肴に、箸も酒も進む。


「総二郎。おい」

ふと気付いたときには、カウンターにうつ伏せになり、眠っている。
あきらが起こそうとするのだが、強行スケジュールが祟ったのか、酒の量が多かったのか。起きる気配を見せない。
尚も起こそうとするのを止めたのは、つくしだった。

「いいよ、美作さん。もう少し寝かせてあげて。
ひと眠りすれば落ち着くだろうからね」

そう言って総二郎を柔らかく見つめる。
その姿に何かを察したのか、3人がカタンと椅子を引いた。

「じゃあ、俺等はそろそろ…」「またね」「閉店まで起きないようなら、叩き出せよ」

思い思いのことを述べ、つくしに軽く手を挙げる。
更には「ええーまだいるぅーー」とすっかり出来上がった滋、苦笑する桜子と優紀を引き連れ去って行った。
眠る総二郎にそっとケットを掛け、宮内と2人、静かに後片付け。
あらかた終わったところで、宮内がエプロンを取った。

「…少し、外しますね。バックヤードを見てきます」
「あ…宮内さん。でしたら私が…」
「申し訳ありませんが牧野さんには、閉店準備をお願いしても…?」
控えめに告げると、地下倉庫へと向かう。

残されたのは、つくし一人。
否、あとは眠る総二郎。

テーブルを拭き、水回りを綺麗にする。
閉店の支度を終えたつくしが、そっと、総二郎の隣に座る。

相当、無理をしたのだろう。
総二郎は気持ちよく眠っており、起きる気配はない。
きょろきょろと辺りを見回す。宮内もバックヤードへ行ったまま。
今は他に、誰も居ない。

「そっ…総…さん…?」

小さな声で呼んでみる。
が、総二郎はすうすうと眠ったまま。

「…総さん…。風邪…ひきますよ…」

先程よりほんの少しだけ、大きな声を出してみる。
が、総二郎は反応しない。
ここのところ雑務が増え、忙しいと言っていた。
最初、東京に戻るのは明日昼頃と言っていたのに、半日以上早く帰ったのだから、相当無理をしたのだろう。
つくしの心の中に、温かいものが浮かんでくる。

「…総さん…」

まだ面と向かっては言えない、総二郎の名前を繰り返す。
呼ばれた総二郎は、何処か微笑んでいるようだった。




2_hoshi.jpg
Illustration by MS.Hana Kawamori




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Comments - 6

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スリーシスターズ  

こんばんは。

星香さんが総二郎くんを!ってびっくりしました。
作家の皆さん、色々なCP書けるんですね~。
すごい・・・!

総二郎くんの心の叫び!
おかしい。なんかおかしい。

ううん、総二郎くんおかしくないよ、普通の付き合いだよ!
今までの女の人が大人の洗練された(ような?)女性ばかりだったし、一方的に好かれていただけの恋愛だったからそう感じちゃうんでしょうね。
総二郎くん、本当は純情青年だったんですね!
司くんといい勝負ですよ!

親友(こうなると悪友!?)3人どころか、他にもつくしちゃんに群がる人間が増えている!
つくしちゃんの人柄とはいえ、今の総二郎くんにはため息しか出てこない!?
でも眠ってしまった総二郎くんを優しく見つめるつくしちゃんに、3人はちゃんとつくしちゃんの気持ちに気づいてくれましたね。
宮内さんもちゃんと分かっているみたいですしね。
総二郎くん、みんな陰ながら応援してくれていますよ。
だから名前で呼ばれなくても大丈夫。
つくしちゃんの気持ちは総二郎くんにちゃんと向いていますよ♥

2017/10/24 (Tue) 18:46 | EDIT | REPLY |   
星香  
スリーシスターズさま

ご訪問&コメント、ありがとうございます♪

はい、何故か総×つくしチームに入ることに…(^^;)
勢いで「書きます!」とは言ったものの、総ちゃんはやはりハードルが高かったです(><)

総ちゃん、凄い遊び人なのですが、本気で好きな人には手を出せない。
何となく、そんなイメージを持って書いてみました。
うふ、F4はやはり皆イイ男。(あと宮内さんも)
さらっと、2人だけの空間を持たせてくれました。

さて…この後は…?
次の更新をお待ち下さいませ…。

ありがとうございました。<(_ _)>

2017/10/25 (Wed) 00:59 | EDIT | REPLY |   
kachi  

星香さん
こんばんは!
お話の更新ありがとうございます😊

総ちゃん編ですね♪

つくしに早く会いたくて大急ぎで来てみたら、男友達に女友達と楽しそうにしていて寂しそうな総ちゃんですね。

数々の女性との経験はつくし相手ではあまり役に立たないというか、はじめて本気になった相手だから違っていて当たり前なのかもしれませんね。
そんな不器用なところが応援したくなりますね。

ちゃーんと
2人きりなら総さんと名前で呼んでくれているつくしちゃん。
寝てて聞こえてないのが残念。
今度は起きている時に呼んであげたら、大喜びでしょうね(笑)

2017/10/26 (Thu) 23:31 | EDIT | REPLY |   
星香  
kachiさま

ご訪問&コメント、ありがとうございます♪
はは…調子に乗って、何故か総ちゃんにも参加致しました。

百戦錬磨の筈なのに、つくしちゃん相手には上手くいかない。
個人的な総ちゃんのイメージのままに書いてみました。

つくしちゃんも素直になれないのか、照れているだけなのか…?
(恐らくは後者?)
なかなか名前が呼べません。
総ちゃん、もしかしたら狸寝入り…かも?
いやいや、ここは本当に寝ていそうですね(^^;)

イベントも本日ラストとなりました。
最後までどうぞお楽しみ下さいませ…

ありがとうございました。<(_ _)>

2017/10/27 (Fri) 10:51 | EDIT | REPLY |   
さとぴょん  

星香様♡
初心な青年総二郎、カウンターに突っ伏して寝る( *´艸`)♡
のお話ありがとうございました♡

凄くよかったです。(≧▽≦)♡
明日から総つくお願いします。(笑)

星香様の手にかかると、総二郎が実に可愛い♡
酒の強い総二郎が、酔うだけでも珍しいのに
こんな風にカウンターで寝ちゃうなんて反則技(≧▽≦)♡

つくしに会いたくて限界までがんばってきたのに、
実際目の前にすると、初心な青年になってしまう感じが
すごくよく伝わってきました。

また宮内のさりげない気遣いがいいですね♡

総二郎のためだけに用意された小鉢や一口サイズのおにぎり
つくしの総二郎だけへの気配りと愛情に
嬉しくて箸も酒もすすむ総二郎の姿が、すごくよかった♡

会話もないし、そばにもいないのに、
お互い相手のことを思ってるこの空気が、
すごく美味しかったです♡

「・・総・・さん・・」
二人きりで、誰もいないところで
やっと名前で呼べたつくしちゃん。
可愛かったですねぇ♡

「・・・総さん・・・」
この呼び方堪りませんね♡

つくしの前で、寝顔を見せる無防備な総二郎
美味しい美味しいお話ありがとうございました♡(*^^*)♡

2017/11/07 (Tue) 14:20 | EDIT | REPLY |   
星香  
さとぴょんさま

ご訪問&コメント、ありがとうございます♪
思わず「はい!」と手を上げてしまいました…(^^;)

総ちゃん、きっとくたびれて、クテクテになって、
でも頑張って帰って来たら…
つくしの側に居るのは親友3人(^^;)
個人的イメージですが、
総ちゃん、とっても器用なのにある意味凄い不器用だな…
と思いながら書いてみたシーンでした。

とはいえ、ちゃんと総つくになっていたのかドキドキでしたが
そう言って頂けてほっとしました。(^^)

イベントも無事、最後まで公開することができました。
沢山コメント頂けて、もう感謝、感謝しかありません(^^)♪

ありがとうございました。<(_ _)>

2017/11/07 (Tue) 21:46 | EDIT | REPLY |   
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